まずはこれだけは押さえよう!「損益通算」の仕組み

まずはこれだけは押さえよう!「損益通算」の仕組み税金

投資における節税の重要なキーワードである損益通算(そんえきつうさん)。これを完全に理解すれば、所得税の節税を意識しながら賢く投資することができます。自営業者やフリーランスはもちろん、不動産事業をしているサラリーマンも活用できる仕組みです。

損益通算の考え方:いくつかの事業で相殺するケース

「損益通算」という字面から内容が難しそう……と感じる方もいるかもしれませんが、理屈自体はとっても簡単です。たとえば、2つの事業をしている方がいたと仮定しましょう。事業Aで100万円の利益が出て、事業Bで50万円の損失が出たときに、利益から損失を差し引ける可能性があります。下記のようなイメージです。

・100万円(利益)-50万円(損失)=最終利益50万円

利益から損失を差し引くことで最終利益を減らせました。これによって結果的に「課税される所得を減らせる」という大きなメリットがあります。この仕組みを使えば、マンション経営をしているサラリーマンが、給与所得とマンション経営の赤字を損益通算することも可能です。(ただし、事業として認められるための開業届け、確定申告、一定規模の事業などが必要と考えるのが一般的)

損益通算の考え方:損失が利益を上回ったケース

冒頭で紹介したのは利益が出たときのパターンでした。今度は、損失が利益を上回った場合の損益通算でも考えてみましょう。事業Aで50万円の利益が出て、事業Bで100万円の損失が出たと仮定してみます。

・100万円(損失)−50万円(利益)=最終損失50万円

確定申告をきちんと行えば、この損失50万円は3年間繰り越すことが可能です。たとえば、翌年度50万円の利益が出たときには、本年度の損失50万円で相殺できます。このような使い勝手のよさも損益通算の魅力といえるでしょう。3年間繰り越せるということで、損益通算は間接的なリスク回避機能になります。

そのため、投資家の中には「この投資は損益通算が使えないからやらない(逆に、損益通算が使えるからやる)」という方もいるくらいです。留意点としては「3年間繰り越すことも可能」ということは、逆にいえば、「3年使わなければ消滅する」ということです。

損益通算の考え方:金融投資の枠組みで相殺するケース

ここまでは、事業間の損益通算で考えてきました。しかし、株式や投資信託など金融投資の枠組みの中で損益通算することも可能です。たとえば、上場株式Aで利益が出て、上場株式Bで損失が出た場合、両者の間で損益通算できます。注意したいのは、収入の種類が違うもの同士は一部の所得をのぞき損益通算できない点です。たとえば、事業所得同士の利益or損失、上場株式同士の譲渡益or損失などはそれぞれ損益通算できます。

しかし、事業所得と上場株式の損益通算はできません。損益通算が可能な所得は「不動産所得」「事業所得」「山林所得」です。まずは同一の所得内で損益通算し、それでも損失が残る場合、上記の所得間での損益通算が可能です。

まずは「種類が同じときだけ損益通算できる」と覚えておきましょう。

損益通算を使えないタイプの金融投資もある

注意するポイントとして「損益通算が使える投資、使えない投資」があることも覚えておきましょう。損益通算を使えない投資で損失を出しても、違う投資の利益から差し引くことはできません。

  • 損益通算のある投資→上場株式、公募株式投信、国債、地方債など
  • 損益通算のない投資→仮想通貨、デリバティブ取引など

NISA口座には損益通算が使えない

最後に、もうひとつの注意するポイントとして、NISA口座で取引した株式や投資信託は「損益通算の対象にならないこと」が挙げられます。「NISA口座では利益に税金がかからない」というメリットがある代わりに特定口座や一般口座と損益通算が使えないという制約があります。このことに納得したうえでNISA口座は契約すべきです。

本稿では、損益通算の内容をわかりやすく把握するため、内容を簡略化している部分もあります。実際に利用するときは、細かい要件がありますので、税理士などの専門家のアドバイスやサポートのもと実行することをおすすめします。

 

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アセットONLINE編集部
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