2019.1.12
税金

相続税の高い節税効果で知られる相続時精算課税制度とは?

(写真=Adam Gregor/Shutterstock.com)
(写真=Adam Gregor/Shutterstock.com)
相続の発生が見込まれる方にとって、相続対策は重要な問題です。とかく税率が高いというイメージが強く、「何も相続対策をしなければ、高額の相続税で資産が大きく目減りしてしまう」と感じる方も多いでしょう。

そこで検討に値するのが、生前贈与を活用した相続対策です。特に生前贈与には「相続時精算課税」という制度があり、これを活用すると2,500万円という大きな金額の控除を受けることができます。この制度についての詳細と計算例、そして注意点を解説します。

とかく税率が高いといわれる相続税

相続税の税率は10%から最大55%となっており、課税対象資産が1億円を超えると税率が30%以上となるため、少なくとも税額が数千万円単位の金額になります。これを高いと考えるかどうかは、主観や遺産の規模にもよりますが、やはり多くの方が相続税対策の必要性を感じています。

基礎控除の引き下げによる課税対象範囲が拡大している

国の税収確保という思惑から、相続税は課税強化の流れにあります。その傾向を最も如実に示しているのが、基礎控除額の引き下げによる課税対象範囲の拡大です。2015年1月1日から施行されている税制改正によって、それまで「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」だった基礎控除額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」にまで引き下げられました。

仮に法定相続人が1人のケースでは、基礎控除の引き下げ前なら課税対象額が6,000万円以下なら、相続税が発生しなかったところ、3,600万円以上の課税対象額で相続税が発生することになります。これまで相続税とは無縁だと思っていた人も、無関係ではいられなくなったわけです。

そこで相続税対策の必要性を感じる人が増え、さまざまなスキームを活用して、相続税額を少しでも抑えたいというニーズが高まりました。相続税は節税の余地や選択肢が比較的多く、生前贈与を活用した節税のテクニックもその中のひとつです。

相続時精算課税制度を使えば課税対象額を2,500万円減らせる

相続税対策のひとつに、生前贈与があります。被相続人が存命のうちに相続人に資産を贈与することによって、いざ相続が発生した時に遺産額を減らしておくという考え方です。贈与税には年間110万円の基礎控除が設定されているため、この範囲内で生前贈与し続ければ、年数をかけて少しずつ資産を移転することは可能です。

しかし、資産額によっては、焼け石に水というケースもあるでしょう。もっと早く、そして効率良く資産を移転したい場合に注目したいのが、相続時精算課税制度です。この制度のポイントやメリットは、以下のとおりです。

●2,500万円の特別控除を受けられる
●この制度を適用すると、毎年110万円の基礎控除は使えなくなる
●遺産の先渡しができる
●相続する相手を生前に特定して資産の移転ができる

相続時精算課税制度を適用することにより、生前贈与で2,500万円までの大きな非課税枠が得られます。

仮に生前贈与をした資産額が3,000万円だったとすると、贈与税の税率は50%になります。ただし、直系尊属(祖父母や父母)から子・孫への贈与は、特例税率が適用されて45%になります。この特例税率を適用して、親から子へ3,000万円贈与をしたとすると、計算式は以下のようになります。

(3,000万円 - 110万円) × 0.45 - 265万円 = 1,035万5,000円

ここに出てきた265万円というのは、1,500万円を超えて3,000万円以下の贈与に対する、贈与税の控除額です。この計算結果では1,000万円を超える贈与税が発生するため、相続税対策としての効果はありません。

これに対して、相続時精算課税制度を適用して2,500万円の特別控除を算入すると、計算式はこのようになります。

(3,000万円 - 2,500万円) × 0.2 = 100万円

特別控除の2,500万円を控除すると、贈与税の課税対象額は500万円になります。相続時精算課税制度では2,500万円を超えた分については、一律20%の税率が適用されるため、贈与税は100万円となりました。

生前贈与を活用して遺産の先渡しをしておきたい、資産継承の相手を特定したいといった要望がある場合、この制度を活用することにより贈与税の大幅な節税が可能になります。

相続時精算課税制度を使う場合の注意点

贈与税の大幅な節税が可能になる相続時精算課税制度ですが、注意点もあります。

1. あくまで相続時の精算となるため、課税の先送りになるだけという側面もある
2. 一度この制度を選ぶと、取り消しは不可
3. 贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告が必要
4. 以後は年間110万円の基礎控除は使えない

特に意識したいのは、1つ目の注意点です。生前贈与をした時には大幅な節税が実現しますが、相続時にその分が合算されるため相続資産の圧縮にはなりません。そのため課税を先送りしているだけだという指摘もあります。

それでは、どんな時にこの相続時精算課税制度が有効なのかと言いますと、以下のようなケースです。

●値上がりが見込まれる土地などを相続する場合、値上がり前に資産を移転したい
●被相続人の意向を反映して資産継承の相手を特定したい

一度選択をすると取り返しがつかないだけに、相続時精算課税制度を利用する際にはしっかりとシミュレーションをしたうえで判断をしましょう。

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