今年も残り少なくなってきました。今回は年末恒例のスペシャル・ランキングを公表します。私は毎年、世界の指数・市場の騰落率などを横ぐしでまとめています。他のメディアでは一切お目にかかれないここだけのランキングですよ~♪
一般に他のメディアでは「株式上昇率」「通貨番付」「投信増減」など個々の商品属性ごとに分かれます。担当する編集者が縦割りになっているためです。しかし、個人にとってこのような「供給者論理」はどうでもよいこと。今やETF(上場投資信託)などを通じて世界のほとんどの商品に投資が可能ですから、個人投資家の視点では市場のベンチマーク(運用指標や指数)を横断的に測る必要があります。
さて、このアカウントでいちばん気になるのは「『投資不動産』の結果はどうだったの?」でしょうね。残念ながら投資不動産のベンチマークはありません。そこで、日経電子版でもお世話になっている東京カンテイさんの公表する首都圏マンション賃料(1平方メートル当たり価格)を援用させていただこうと思います。他の指数はおおむね世界の取引所に上場している商品・指数か、もしくは公表されている数値です。

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まずは2024年末値と比べた騰落率(12月5日時点)を算出してみましょう。投資不動産は約9%の上昇です。都心を中心とした急激な値上がりは何度もメディアで取り上げられました。それはそうだろうな、と思う反面、賃料でおよそ1割の上昇・・・金融商品はじめ他の指数と比べると相対的には「見劣りする」「たいしたことはない」という印象ではないでしょうか?
たとえば、同じ「代替資産」の属性を持つ金価格と比較してください。田中貴金属工業の小売り価格を参考にするとこちらは57%の上昇。とんでもない値上がりですね。貴金属店の前には行列ができたといいますが、必ずしも投資家ではない一般のお客さんも多いようです。それほどのブームでした。私は金を買うほどの資力なんてないので金ETFをイデコ(個人向け確定拠出年金)に組み入れました。
脱線しましたが、改めて投資不動産の9%上昇。どう受け止めますか?
他の金融商品を買っておけば良かったーーという後悔めいた結論になるのでしょうか?
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こここで登場するのがシャープレシオです。小難しい理論を省くと、要するにどれだけのリスクをとって当該リターンを得たか、という指標です。たとえば宝くじで1万円を10万円に増やした場合、「すご腕だね」と評価するひとは誰もいません。「運が良かったね」になります。競馬や競輪も同じ。リスクが大きく、リターンがマイナスになる可能性が大半だからです。
株式でも上がるときばかりではなく下がるときも日常茶飯事です。どの商品も波がありますから、リターンを得たのはたまたまだったという見方もできます。
シャープレシオの高い商品・指数というのは、リスクが小さい割には相対的に高いリターンを享受したという評価になります。投資対象に「MVP」という概念があるなら、優秀性の判定にはまさにこの投資効率が基準になると考えます。
理屈はこれくらいにしてシャープレシオで並べ替えたランキングを一覧にしてみましょう。
投資不動産はなんと!上位3位に食い込みました。賃料はすぐに上がるわけではない(契約更新するまで改定しにくい)けれど、不況ですぐに下がるわけでもなく、年を通じて比較的安定しています。
つまり価格の波が小さいので上昇が小幅でも効率性が高かったという結論を導くことになります。ちなみに首位は先ほど挙げた金ですね。
金の話は別の機会に譲りますが、経済が良くなっても悪くなっても上がるという不思議な要素をたくさん抱えています。つまり波=リスクが小さいのです。
ちなみに最下位は長期国債(10年物など)でした。国債は逆にもっともリスクの小さい商品の1つです。安全性の高い代表格ともいえます。しかし、日本がデフレを脱却して日銀が利上げを進める中で、魅力が急速に薄れました。今年はリスクが小さい割には損が大きかった商品ということで債券に投資を増やした方はイケてなかったことになります。
なにはともあれ、アセットリードのオーナーさんはたぐいまれな優秀な投資商品を保有しているということですから、どうぞ安心して持ち続けていただければと思います。
著者・監修者プロフィール

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日本経済新聞社 コンテンツプロデューサ-兼アセットリード物件オーナー
●1989 年入社、証券部配属。東証や日銀、NY駐在など主に金融・資本市場担当。
BSテレビ東京「日経モーニングプラスFT」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター
テレビ解説のほか日経電子版開発、コラム執筆など「話す」「創る」「書く」の三刀流をこなす。
CFP®、1種証券外務員、シニアプライベートバンカー、宅地建物取引士。
●奈良出身。趣味は世界遺産巡り(現在43カ国・地域歴訪)、大型バイク、ドローン、ゲーム、競馬
●最新刊「50 代から輝く!『幸福寿命』を延ばすマネーの新常識」(日経出版社)など著書多数。




