ホワイトカラーが不要になるDX時代 淘汰されないためには?

ホワイトカラーが不要になるDX時代 淘汰されないためには?マーケット

時代を読み解くキーワード「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。DXの本格化によってホワイトカラー(知的・技術的な労働、事務・販売の労働に従事している雇用者)の大量リストラや配置転換がはじまっています。一部で進んでいるDXは今後、あらゆる分野で進むことでしょう。DXに対応できないことで淘汰されないためには、まずDXの意味や事例を知る必要があります。併せて、現場でDXを進めるための流れも解説します。

リストラや配置転換……DXの大きな影響を受けるホワイトカラー 

DXとは、スウェーデンのウメオ大学の教授、エリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念です。デジタル技術の進化によって人々の暮らしや生活がより良いものに変革していくのが定義とされています。現在では、クラウド化やAI(人工知能)、ディープラーニング、IoTなどの技術を生かしたデジタル化により、世の中のあらゆる分野・階層で変革(DX)が進んでいます。

近い将来、このDXの影響を大きく受けるのはホワイトカラーです。これまで人がパソコンなどで行ってきた事務作業をソフトウェアロボットが自動化して行うRPA(Robotic Process Automation)の浸透によって、ホワイトカラーの淘汰が一気に進むといわれています。RPAでは開発者が定義したプログラムに沿って、大量のパソコン作業を自動処理することが可能です。しかもミスもなく、24時間休むこともなく、文句も言わずに業務を完遂するのです。これにより、働き方改革における劇的な業務効率化が実現できます。

このDXによる変化の一端を示すのが、メガバンクの大規模なリストラや配置転換でしょう。かつて勝ち組エリートの代表といわれたホワイトカラーが不要になりはじめているのです。

さらにDXの流れを加速させるのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。RPAによる自動化とともに、リモートワークやオンライン会議などの普及によって、管理職の不要論も高まっています。このような中、AIの浸透を待つまでもなく、あらゆる企業は急ピッチでDXを進めなければならない岐路に立たされています。

日本企業でもDXが急速に進んでいる

DXは具体的にどのような形で進んでいるのでしょうか。まずグローバルな視点で見ると、デジタルとリアルの融合で国のあり方そのものを大きく変えている国が増えています。例えば“デジタル国家”といわれるエストニアでは、行政のシステムがほとんどデジタル化され、オンライン上であらゆる手続きが効率的に行うことが可能です。またスウェーデンや中国はDX推進国として知られています。

日本でも、大企業、中小企業にかかわらずDXを進めている企業が急増しています。身近な例では、DXの成功のお手本といわれるAmazonを筆頭に、簡単なアプリ操作で個人がスマホで中古品を売買できる「メルカリ」、ネット上のやり取りだけで宿泊施設探しから予約までを手軽に行える「Airbnb」などが、DXを実践し成長した企業として挙げられます。また「Netflix」は、映画を見るという行為をレンタルショップ来店から自宅でできるサブスクリプションサービスに変革したことでDXに成功した事例です。

【主なDX成功事例】
・Amazon:「カスタマーレビュー」「レコメンデーション」といった機能を活用しネット販売を拡大させた
・Airbnb:旅行者と宿泊施設のマッチングをデータのやり取りだけで完結させた
・Netflix:通信技術の発展に伴い、インターネットを活用した定額制の映像配信サービスとして浸透
・家庭教師のトライ:パソコン・スマートフォン・タブレットなどあらゆる端末で授業が受けられる
・日本交通:全国規模でタクシー(他社含む)が配車できるアプリを開発した

事例に挙げたのは、どれも私たちの生活と身近なサービスを展開している企業です。ここからもわかるように、DXは決して“対岸の火事”ではなく、今すぐにでも対応すべき事案にまで発展しているといえます。では、具体的に企業やビジネスパーソンがDXに対応するにはどのようにしたらよいのでしょうか。

DXをビジネスの現場で進めるための3ステップとは

グローバルで9万7,000 社の働き方改革を支援するBoxの日本法人代表取締役・古市克典氏はIT JAPANの講演(掲載:日経クロステック)で以下のような3ステップで解説しています。

  • ステップ1:コンテンツのデジタル化
  • ステップ2:実業のデータをIoTで収集
  • ステップ3:DXの実行

ステップ1:コンテンツのデジタル化

社内コンテンツ(文書、絵、動画、音声など)をクラウド上で整理して関係者で共有できるようにする。

ステップ2:実業のデータをIoTで収集

収集したデータをクラウド上のコンテンツと統合。さらにAIで業務自動化を加速し既存の業務システムを社外サービスとAPI連携させる。

ステップ3:DXの実行

ステップ1・2を経てこのステージに達すると、ビジネスモデルをいつでも変革できる状態になります。デジタル技術を活用してニーズに即した新事業を立ち上げるなども柔軟に行いやすくなるでしょう。

補足するとステップ2の「実業(関係するビジネス)のデータ収集」が進められるか否かがDXを進めるうえでは欠かせません。DXにおけるデータ収集の重要性についてDXをテーマにした話題の本『アフターデジタル オフラインのない時代に生きる』(日経FinTech)では以下のように述べています。

「こうした世界の変化において一番重要なことは『オフラインがなくなる世界の到来』です。今まではデータとして取得できなかった消費者のあらゆる行動が、オンラインデータになって個人のIDとして結びつくのです」
出典:『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』(日経BP社)

DXを“自分ごと”として捉えることが重要

企業やビジネスパーソンとして淘汰されてしまわないために何より大切なことは、まずDXを“他人ごと”ではなく“自分ごと”として強く意識することです。先に触れた通り、DXによる淘汰はとくにRPAの影響を受けるホワイトカラーで進むと考えられます。「DXを推進するために今何をすべきか」を一人ひとりのビジネスパーソンが問われています。

アメリカではDXに対応できなかった創業100年超の老舗企業数社が、コロナショックの影響から経営破綻に追い込まれました。もう「待ったなし」の状況といえます。自社や所属する部門が前項で紹介したステップ1~3のどこに該当するかを俯瞰しながら、周囲と協力してDXを考え、実行していきましょう。

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アセットONLINE編集部
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