「ライフ・シフト」から考える これからのキャリア

人生100年時代のビジネスキャリアの考え方マーケット

人生100年時代という言葉を日本に定着させたのは、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットというロンドンビジネススクール教授の2人が書き上げた『LIFE SHIFT(ライフ・シフト」~100年時代の人生戦略~』です。サブタイトルの通り、もし皆さんの人生が100年まで続くと想像してみると、これからの生き方を変えざるを得ないと気づくのではないでしょうか。

人生100年時代のビジネスキャリアの考え方

現代において生誕から18~22歳までの教育期間、社会人となってから60~65歳までの労働期間、その後の老後期間という3つの時期に分けるパターンは崩れ去っています。また公務員以外の民間企業において、日本的終身雇用の時代はすでに終焉を迎えています。定年まで勤めあげ、その後嘱託などで雇用延長により65歳まで何とか勤務して最後は周りの同僚から花束を受け取り、会社を去る……といった光景は「過去の幻想」となる時代がそこまで(もしくはすでに)来ているのではないでしょうか。

民間企業では、リストラや企業自体の外資への身売り、合併買収などにより、会社が従業員を一生何とかして食べさせていく時代が終わろうとしているのが現状です。そのため会社経営が厳しくなったときは、いろいろな名目をつけて割り増し退職金付きで退職してもらう(割り増しが付けばよい方ともいえます)ことも少なくないでしょう。

今後は少子高齢化が加速し、労働人口が減少します。高齢者や女性が活躍できる社会にしなくてはならないのは至極当然の考え方といえます。しかし同時に国内では消費人口も減っていくことも忘れてはいけません。生産物の消費力を維持するためには、「海外消費に頼る」「海外から人を入れて消費人口を増やす」といった二者択一しかないのです。

この現実は、従来の一直線型ビジネスキャリアではもはや成り立たない社会構造へ変化することを意味します。バリエーションに富んだ人生を過ごす人たちがごく普通に出現する時代が、すぐそこまで来ているのです。

行動や考え方において時代の変化についていかないと取り残されてしまう時代が来ています。ビジネスキャリアも、いかに変化へ柔軟に対応していく能力があるかが重要です。人間は「できれば現状維持でいきたい」「変わりたくない」と考えやすい生き物ですが、その概念を取り払って変化を敏感に感じ取ることで自ら変わっていかなくてはいけません。

ライフ・シフト的 生き方の実践

以上を踏まえ、『ライフ・シフト』では「従来型の一直線のキャリアスタイル」から「マルチスタイル」へと、今後はいやおうなしに変化していくであろうと予測しているのです。100年時代においては、60~65歳で仕事を終わらせるのではなく、働く意志と健康があれば70~80歳まで働く時代がやってくるといいます。しかし、当たり前ですが、70~80歳で40~50歳の人たちと同じ能力、同じ体力が維持できるはずがありません。働き続けるためには、自分の能力と体力に合った仕事に就く必要があります。それを探すことが探検者(Explore)として求められるのです。

また、ライフ・シフトでは、ビジネスキャリアのとらえ方の基礎となる以下の3つのステージが現れると書かれています。
・「エクスプローラー」(探索者)のステージ
・「インディペンデント・プロデューサー」(独立生産者)のステージ
・「ポートフォリオ・ワーカー」のステージ

「エクスプローラー」(探索者)のステージ

特に若いうちは、1ヵ所に落ち着くことなく世界を旅したり、いろいろな経験を積んだりすることで自分自身のアイデンティティを確立することが重要です。周りのアイコンやロールモデルとなりえる人たちとの接触によって、自分の生き方を確立していく時期とします。したがって社会構造もそのような体制をバックアップできるような制度に変える必要があるのです。

「インディペンデント・プロデューサー」(独立生産者)のステージ

特定の組織に属することなく自由に働くのが「インディペンデント・プロデューサー」です。日本でもIT系のプログラマーやデザイナーなどが、クラウドワークスやランサーズといった企業と個人をつなぐマッチングサイトで、仕事を探す時代がすでに始まっています。

「ポートフォリオ・ワーカー」のステージ

異なる仕事や業種へ同時にかかわる「ポートフォリオ・ワーカー」と呼ぶ働き方の形態です。こちらもすでに始まっており、ベンチャー企業や大企業でも副業が認められる時代になっています。政府の「働き方改革」により、この変化はますます推進され、「副業」というどちらが主でどちらかが従であるという関係から、主従は関係ない「複業」というパラレル・ワーカーへとより進化していくでしょう。

これからは時代の変化を楽しむ能力がとても重要です。選択肢が増え自由度が上がることは、逆にそれに対応する能力が必要になってきます。そのため、より難しい舵取りの場面が多くなるわけです。この変化をおおいに楽しむことができるかどうかが人生100年時代を生き抜く力の源泉であり、一つの鍵となるのではないでしょうか。

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アセットONLINE編集部
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