企業型・個人型確定拠出年金の違いとは

企業型・個人型確定拠出年金の違いとは資産運用

公的年金を補完する手段として、確定拠出年金が注目されています。公的年金だけで人生100年時代を過ごすには心もとないこと、確定拠出年金を使って税制上のメリットを最大限生かせること、長期積立に適していることなどが、その理由です。

しかしその仕組みは、まだまだきちんと理解されていないのが現状です。確定拠出年金には、企業型と個人型がありますが、この2つの違いを明らかにして、皆さんがどちらに加入できるかについて解説します。

確定拠出年金と確定給付年金との違い

確定拠出年金(DC・Defined Contribution Plan )を説明する前に、確定給付年金(DB・Defined Benefit Plan)との違いを説明します。

確定給付年金(DB)の特徴は、退職者に支払うべき金額が決まっていることです。低金利によって運用利回りが低下し、企業の負担が増えています。新会計基準の適用によって積立不足が顕在化するのを回避したい、退職給与引当金の無税引当率が引き下げられたため有税引当部分を圧縮したい、というニーズが生まれてきました。

さらに終身雇用制度の終焉によって転職が一般的になり、個人もポータブルな年金制度を求めているのが現状です。

一方、確定拠出年金(DC)の加入対象は、65歳未満の企業の従業員及び、60歳未満の自営業者等です。確定拠出年金(DC)も「企業型年金」と「個人型年金」に分かれます。最近話題のiDeCoは、この「個人型年金」の俗称です。

確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)の違いを以下の表にまとめました。

 確定拠出年金(DC)確定給付年金(DB)
概要各人ごとの拠出額と運用収益を基に老後の給付が行われる予め必要給付額を賄うために必要な掛金を年金数理(アクチュアリー)で計算して拠出される
拠出掛金額は規約に基づき予め確定掛金額は運用実績により変動
給付年金給付額は運用実績により変動年金給付額は予め確定
運用指図自己責任で加入者が運用指図を行う企業、基金が信託銀行・生命保険会社を通じて運用指図し、運用責任を負う
持分加入者の持分は拠出時、運用時共に明確持分は不明確
ポータビリティあり限定的

この表からわかることは、確定拠出年金が自己責任で運用する仕組みになっていることです。今まで会社任せで行っていた運用を加入者自身で行う必要があることが、最大の相違点と言えます。

企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の違い

次に、確定拠出年金の「企業型年金」と「個人型年金」の違いについて見ていきましょう。

企業型年金の加入対象は満65歳未満の従業員で、企業は年金規約を作成し、これに基づいて掛金を拠出します。一定の資格を定め、特定の従業員のみを対象とすることもできます。掛金は企業負担であり、その全額が法人税法上、損金となります。

個人型年金は、原則60歳未満の自営業者等の国民年金第1号被保険者、公務員や企業の従業員である国民年金第2号被保険者、2号被保険者の扶養者である国民年金第3号被保険者が対象です。最大の特徴は、個人が掛金を拠出する点です。2018年5月、個人の加入者拠出に併せて事業主も拠出できる、小規模事業主掛金納付制度(愛称 iDeCo+)が導入されました。

個人型年金は運営機関も自分で選択し、手数料が発生する場合も自己負担となります。

個人型年金が導入されたことによって、基本的に全国民が公的年金以外の任意の年金制度に加入できることになりました。このことは、「国民に制度は整えたので、後は自分で加入するかどうか考えてください」という国からのメッセージかもしれません。

 企業型年金個人型年金(iDeCo)
対象者企業の従業員自営業者、無職、企業の従業員、公務員、専業主婦・主夫
加入企業型年金規約に基づき加入する国民年金基金連合会に申請して加入
拠出規約に基づく範囲内で掛金を拠出、拠出限度額の管理は企業が行う、企業が資産管理機関に掛金を払い込む加入者が5,000円以上1,000円刻みで法定限度額まで任意に掛金を設定できる。第1号加入者は国民年金基金連合会へ、第2号加入者は原則企業が天引きして国民年金基金連合会へ払い込む
ポータビリティ少なくとも3年以上勤務する者に対して全額受給権を付与する拠出時に全額受給権が発生する
運用加入者が予め決まった商品の中から選択し運用する加入者が予め決まった商品の中から選択し運用する

企業型・個人型年金には、銀行の定期預金や生命保険会社の貯蓄型生命保険、証券会社の投資信託など、複数の金融商品が用意されています。どちらも、①掛金の所得控除による所得税・住民税の軽減 ②運用期間が長いので複利効果が高い ③受給時の税制が優遇されている ④転職時もポータビリティがある ⑤商品選択の幅がある などがメリットです。老後資金の運用手段として、積極的に活用したいものです。

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アセットONLINE編集部
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