サラリーマンでも節税のために経費計上できる 資格取得の費用、本や雑誌の購入費、お客様との飲み代…

税金

自営業者などの事業主の場合、例えば顧客との商談で利用した飲食代や雑費なども含めて、事業に関わるものは基本的に経費となります。給与所得者であるサラリーマン(会社員)のなかには、「サラリーマンには経費の自由度がなく不公平だ」と感じている方もいるでしょう。

しかし、サラリーマンでも仕事に必要な出費は「特定支出控除」として経費計上することができます。この記事では「特定支出控除」についての概要、サラリーマンが「経費」にできる費用の種類、確定申告時に注意すべきポイントについて解説します。

1.サラリーマンが知っておきたい税金の前提知識 「特定支出控除」と「給与所得控除」

サラリーマンも経費計上できますが、控除対象となる金額はあらかじめ定められています。

1-1.「給与所得控除」とは?

冒頭で会社員には経費の自由度がないと書きましたが、実はサラリーマンには使っても使わなくても給与から一定金額を引くことができる「給与所得控除」があります。給与所得控除の金額は以下の表のように給与に応じて定められており、あらかじめ差し引かれています。この「給与所得控除」は、収入金額が増えるほど控除率は下がっていきます。

・平成29年分~令和元年分

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超10,000,000円以下収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超2,200,000円(上限)

・令和2年分以降

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超8,500,000円以下収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超1,950,000円(上限)

(国税庁:「No.1410 給与所得控除」より)

例えば給与等の収入金額が800万円のサラリーマンであれば、
・800万円×10%+120万円=200万円
が必要経費の名目で(経費として使っても使わなくても)引かれています。

1-2.「特定支出控除」とは?

「給与所得控除」に対して、実際にサラリーマンが確定申告で経費計上するものは「特定支出控除」と呼ばれます。特定支出控除については、「特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を超える場合、その超える部分について、確定申告を通じて給与所得の金額の計算上控除することができる」(国税庁「~給与所得者の特定支出控除について~」より引用)とされています。

例えば年収800万円のサラリーマンであれば、「給与所得控除」額200万円の2分の1にあたる「100万円を超えた部分」が特定支出控除として認められます。

では、どのような支出が「特定支出」として認められるのでしょうか。

2.特定支出控除と認められる8項目を解説

ここではサラリーマンが経費として計上できる特定支出について詳しく見ていきます。

2-1.サラリーマンの経費として認められる8項目とは

以下8項目の経費が特定支出控除の対象となります。これらの合計金額を確定申告することで税金が戻ってきます。

1.会社と自宅の通勤費
2.転勤に伴う転居費
3.仕事に直接必要な技術や知識を得るための研修費
4.仕事に直接必要な資格取得費
5.単身赴任地と自宅を行き来する帰宅費
6.仕事に係わる図書費(書籍や雑誌など)
7.制服・事務服・作業服など勤務地で着用が必要な衣服費
8.得意先への贈答・接待の費用
※計算方法や申告方法は、本稿の最終項をご参照ください

上記のうち、1から5は、大企業だと充実しているケースが多いでしょう。これに対して、中小企業やベンチャー企業は会社が完全にフォローできず、従業員の個人負担になっているケースもあるのではないでしょうか。そんな方は、確定申告でぜひ取り戻したいところです。

6から8の項目は、2013年度分以降に認められるようになった経費です。例えば、
・専門職の方:業務上の知識を増やすために購入した書籍や新聞、雑誌の購入費
・営業職の方:顧客訪問等、仕事で着用するスーツの購入、客先の接待代金(ただし、勤務先が補填していない分に限る)
これらが経費計上できると考えられます。

2-2.8つの項目の説明と具体例

8つの項目を補足します。

・「通勤費」「転居費」「帰宅費」
一般的に会社側が負担することが多いため個人負担のケースはほぼないでしょう。しかし、規定の通勤費を超えて自己負担している分がある場合には経費計上することができます。
・「研修費」「資格取得費」「図書費」
仕事に必要であることが合理的に説明できる「研修費」や「資格取得費」は、経費として幅広く認められる可能性があります。例えば国税庁の解説には、「2013年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象」とあります。将来、士業として独立するために勉強したいという方には朗報です。
また資格取得のために必要な書籍購入費用も計上できます。自動車免許取得費用や簿記、英語検定などの費用も特定支出の対象となります。
その他、コンサルタントが顧客との対話のため、勉強目的で購入している経済誌なども対象になる可能性があります。
・「衣服費」
営業系の職種の方がおもに対象となる可能性があります。仕事専用のスーツであれば該当すると考えられます。
・「贈答・接待の費用」
会社に申請できていない顧客へのお歳暮・手土産があれば、この制度の活用を検討してみましょう。

3.節税額の計算方法|年収800万円の場合、所得税はどう変わる?

特定支出控除による節税額を求める前に、サラリーマンの手取り金額の計算方法について解説します。

3-1.サラリーマンの手取り金額の計算方法

手取り金額は給与所得控除や基礎控除、社会保険料などの諸々を控除した「課税所得金額」を求めた上で、以下の所得税の速算表と住民税率(10%+均等割)を計算して求めます。

【所得税の速算表】

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超8,500,000円以下収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超※1,950,000円(上限)

(国税庁:「No.2260 所得税の税率」より)

年収800万円の場合、個人差はありますが、おおむね諸々の控除などを引くと課税所得金額は約450万円程度となります。所得税の速算表を使って計算すると、次のようになります。

【特定支出の控除前】
所得税:課税所得金額450万円×20%-42万7,500円=47万2,500円

3-2.サラリーマンの節税額の計算方法

年収800万円のサラリーマンが必要経費として200万円(全額認められる項目)を使った場合の節税額を計算します。確定申告を通じて給与所得の金額の計算上控除することができるのは、給与所得控除額200万円の2分の1にあたる「100万円(200万円-100万円)」となるため、次のようにして求めます。

【特定支出の控除後】
所得税:課税所得金額350万円(450万円-100万円)×20%-42万7,500円=27万2,500円

【節税額】
47万2,500円(特定支出控除前)-27万2,500円(特定支出控除後)=20万円

200万円の支出に対して20万円の節税ができることになります。

4.特定支出控除制度を利用する際の3つの注意点

特定支出控除制度を利用する際の注意点について説明します。

4-1.使ったお金が戻ってくるわけではない

これまでの説明からも分かるように、仮に200万円の支出が経費として認められたとしても支出金額が戻ってくるわけではありません。あくまで「本当に必要なもの」への支出に留めるべきでしょう。

4-2.支出額に対しての節税効果が高くない

先ほどの計算を見て「支出額200万円に対して節税額はたった20万円か……」と思った方も多かったのではないでしょうか。節税が目的で使う制度ではないということもおわかり頂けたでしょう。

4-3.手続きに手間がかかる

支払ったことを証明する領収書等の添付のほか、勤務先から支出項目が業務に必要であるという証明を書面でもらう必要があるため思った以上に手間がかかります。

5.確定申告手続きに必要な添付書類

確定申告には次の書類の添付が必須となります。

・給与所得の源泉徴収
・計上する経費の明細書
・経営者など給与支払者の証明書
・搭乗や乗車乗船に関する証明書や領収書

これらの書類の準備や確定申告の手続きそのものに自信のない方は、管轄の税務署の窓口・電話に相談しながら進めるとスムーズでしょう。
一度、確定申告をすれば、翌年以降はルーティンで処理しやすくなるでしょう。ここで取り上げた8項目の経費が大きいと思われた方は、実行することをおすすめします。


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アセットONLINE編集部
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