不動産投資に欠かせない、減価償却の経理処理を探る

税金

不動産投資のオーナーの方々は、一つの会社を経営するくらいの考えで物件の財務について考えていくことが大切です。財務諸表の中で絶対に欠かせないものは、「税務用損益計算書」と「キャッシュフロー表」です。この2つの表なしで、不動産投資を行うのは、海図なく航海する船のように、とても無謀なことと考えるべきです。

そして、この2つの表は、少なくとも購入後10年間の所有物件から発生する収益や費用予想を元に作成し、「物件を売却するか」「保持し続けるか」の判断に重要な役割を果たすものといえます。まず、税務用損益計算書は、個人所有であれば所得税の不動産所得を申告するために必須なものです。また、キャッシュフロー表は「購入した物件から最終的にいくら手元に残るのか」がわかる書類になります。

不動産投資の成果に大きな影響を与える減価償却費とは

不動産運営の大きな経費は、建物維持費(修繕費)、固定資産税、借入金利、減価償却費といわれています。なかでも減価償却費は経費に占める割合が高くなります。したがって、この減価償却費をコントロールすることが、税金をコントロールすることになるのです。

不動産投資における減価償却費とは物件を購入した時に一括で経費計上するのではなく、税法で定められた期間に案分して毎年、経費計上する仕組みのことをいいます。例えば、2,500万円のワンルームマンションを購入したとします。物件は土地価格と建物価格に分けて考えます。
仮に2,500万円の物件価格の内、建物価格が2,000万円だとした場合、2,000万円を一括で費用計上することはできません。鉄骨鉄筋コンクリート(RC)の場合は2,000万円を47年かけて費用計上していきます。つまり毎年42万5,531円(2,000万円÷47年)を費用計上することになります。何年で案分するかは建物の構造や物により税法で定められています(建物以外でも自動車は6年、パソコンは4年など)。

減価償却費は支出を伴わずに経費計上できる経費項目です。そのため実際には現金を支出することなく、(帳簿上)経費計上できる減価償却を多額に計上できれば、「税務用損益計算書」における利益を圧縮することができ、個人なら所得税、法人なら法人税負担を軽減することができます。
また、「キャッシュフロー表」においても、不動産投資は税引き後の利益を把握することが重要ですので、減価償却費の算出方法はおさえておきましょう。

新築物件の減価償却の計算方法

前項でご説明した通り、減価償却費とは形のあるものの劣化費用なので、不動産投資では建物や付帯設備だけに使え、土地に対しては計上できない点は注意する必要があります。

では、この減価償却費の仕組みを見ていきましょう。税法上、建物、付帯設備には耐用年数が設定され、償却できる年数が決められています。特に建物は構造別に次のようになっています。

構造別の耐用年数:鉄筋コンクリート(RC)47年、重量鉄骨34年、木造22年

さらに、税法ではこの耐用年数に応じて償却率というものが決められています。以下、わかりやすく1億円の新築建物の減価償却費を構造別に計算していきましょう。

・RC:1億円×償却率0.022(耐用年数47年)=減価償却費220万円/年
・重量鉄骨:1億円×償却率0.030(耐用年数34年)=減価償却費300万円/年
・木造:1億円×償却率0.046(耐用年数22年)=減価償却費460万円/年

ここで注目すべき点は減価償却費を計上できる期間です。RCだと220万円の減価償却費を47年間計上できますが、木造だと460万円の減価償却費を計上できる期間は22年間となります。同じ1億円の建物でも、RCは47年、重量鉄骨は34年、木造は22年間かけて経費化していきます。耐用年数が短い建物ほど、年間の経費として計上可能な減価償却費が多くなり、税務上の利益が減ることになり、その分税金が減って最終的に税引き後キャッシュフローが多くなるのです。

中古物件の減価償却費の計算方法

また、建物が新築ではなく中古の場合はどういう計算方法をとるのでしょうか?原則は、建物の使用可能期間を見積もることによって耐用年数を決めるという方法が見積法です。しかし、その建物があと何年使えるかを見積もることは実務上困難なので、税法では中古建物の耐用年数を簡単に算出するための2つの簡便法を認められています。

・築年数が耐用年数を超えている場合
耐用年数=法定耐用年数×20%
【例1】木造の建物(耐用年数22年)で耐用年数を超えている場合
木造の耐用年数22年×20%=4年

・築年数が耐用年数の一部を経過している場合
耐用年数=(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
【例2】RCの建物(耐用年数47年)で10年経っている場合の耐用年数
37年(RCの耐用年数47年-築年数10年)+2年(築年数10年×20%)=39年

経験値の高い投資家(セミプロ)の方々は、あえて新築物件より、オーナーチェンジ物件など、中古物件を購入する方々もいます。これから投資をお考えの方も、この計算方法は覚えておかれると便利に使えます。また、財務戦略上、複数の物件を所有している場合、あえて中古の木造物件を購入することで、減価償却費を有効に使いながらすべての物件トータルで考えることができます。

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アセットONLINE編集部
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