新型コロナウイルスの収束には時間がかかることが予想され、新しい働き方が浸透しつつあります。そのため、今後は採用方針や人事制度を見直す企業が相次ぎ、「必要とされる人材」と「そうでない人材」の基準が大きく変わる可能性もあります。
本記事では具体的に「必要とされる人材」でいるための5つのスキルについて考えてみましょう。
コロナ後、日本の労働環境は二極化する可能性大
新型コロナウイルス感染拡大によって労働環境が激変した要因は「テレワークの導入」です。ただ、テレワークが一気に浸透した会社がある一方、テレワークを導入しにくい業界や業種がある現実も見逃せません。テレワークの導入が難しい業界や職種では、自動化やICT(情報通信技術)の活用などによって徐々に変化していく流れが予想されるでしょう。
テレワークを導入しやすい業界では今後、求められる人材像や評価基準が大きく変わる可能性があります。これを前提にしながら、コロナ後に求められる5つのスキルを解説していきます。
1.複数のオンラインツールを使いこなすスキル
2.時代に即したコミュニケーション力
3.ジョブ型ワークへ対応できるスキル
4.求められる企業・職種へシフトチェンジできる柔軟性
5.新たな課題を発見し解決するスキル
コロナ後に「必要とされる人材」でいるための5つのスキル
それでは、5つのスキルについて細かく見ていきましょう。
1.複数のオンラインツールを使いこなすスキル
東京都庁が2020年5月に実施した東京都内の企業(従業員30人以上)を対象にした調査によると、2020年4月時点のテレワークの導入率は62.7%でした。同年3月のテレワーク導入率は24%だったため、1ヵ月という短期間で40%近くも伸びていることが分かります。
新型コロナを機に、「テレワークがビジネスの新常態(ニューノーマル)になった」といってよいでしょう。
そのためリモートワークの導入に積極的な業界や職種では、「オンラインツールを使いこなすスキルがあるか」が重要になりそうです。主なオンラインツールには、「会議・商談ツール」「ビジネスチャット」「グループウェア」などがあります。
例えば、会議・商談ツールの場合は「Zoom」だけでなく「Google Meet」や「ベルフェイス」、ビジネスチャットの場合は「Slack」「ChatWork」などがあります。さらに「Microsoft Teams」は、会議ツールやチャットを横断した総合的なビジネスハブとして活用できます。また、社内の情報共有には「G Suite」や「Microsoft 365」などのグループウェアを、取引先とのデータ共有には「Google Drive」や「Dropbox」などのオンラインストレージを使いこなす知識やスキルが求められます。
・「会議・商談ツール」:「Zoom」「Google Meet」「Microsoft Teams」「ベルフェイス」など
・「ビジネスチャット」:「Slack」「ChatWork」「Talknote」など
・「グループウェア」:「G Suite」「Microsoft 365」「サイボウズ」など
・「オンラインストレージ」:「Google Drive」「Dropbox」「OneDrive」など
ここで大事なことは、自社で採用しているツールだけでなく、複数のツールを使えるスキルを持っていることでしょう。なぜなら、クライアントで採用しているツールに合わせる必要があったり、担当クライアントが変わったりした途端に使用ツールが変わり、必要とされない人材になりかねないからです。
これらのツールをすべて完璧に使いこなすのは難しいかもしれません。しかし主なツールについては無料で提供されているものも多いため、基本機能や簡単な操作方法は覚えておきたいところです。
2.時代に即したコミュニケーション力
いくらオンラインツールを駆使できても、肝心のコミュニケーション力がなければ機能しません。ただし、リアルなコミュニケーション力とオンラインツール上のそれとはイコールでない点は注意が必要です。
例えば、チャット機能一つとっても「リアクション機能をTPOに合わせてうまく使う」「検索しやすいキーワードを含める」などの配慮が必要といわれます。コロナ後のビジネス環境においては、社内外問わずオンラインでのコミュニケーションが主流になることが想定されます。対面時代には通用した「御用聞き」や「ご機嫌取り」というような概念は通用しなくなり、相手のニーズを的確に汲み取りそれをしっかりと具現化できる提案力がより重要視されるようになるでしょう。
過去のビジネスコミュニケーションの常識にとらわれず、オンライン時代に即したアップデートが求められます。
3.ジョブ型ワークへ対応できるスキル
テレワークの導入は、人材の評価基準も変えようとしています。コロナ以前は、同じ空間で協力しあって働く「メンバーシップ型」の企業が大半でしたが、この働き方では直接的な成果をあまり出さない管理職やムードーメーカーなども一定の評価を受けられました。しかしリモートワークを導入した企業(例:富士通、オリンパス、日立など)から、業務内容と達成目標が明確な「ジョブ型」への移行が次々に発表されており、この流れは大手企業・中小企業を問わず広がっていきそうです。
ジョブ型の人材評価では「効率的に成果を出しているか」が重視されます。これを実現するには、オンラインツールを駆使できるスキルに加えて、タイムマネジメントやプロジェクト管理・タスク管理などの高い能力が求められるでしょう。
4.求められる職種・企業へシフトチェンジできる柔軟性
コロナ以前からも注目されていた「DX(デジタルトランスフォメーション)」の流れが、このコロナ禍において急激に加速しています。DXとは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。DXの一例としては、すでに身近になっているECをはじめ、自動運転や物流の自動化、無人型の小売業、オンラインの医療・教育などが挙げられます。
このDXの流れの中で淘汰される職種、企業がある一方、ニーズの変化によって新たに生まれる職種やビジネスもあるでしょう。コロナ自粛期間中に、いち早くテイクアウト対応やUber Eatsに参入した飲食店や、EC化に取り組んだ中小企業が「応援消費」の波に乗って業績を伸ばしている事例もあります。固定観念にとらわれることなく、いかに柔軟に変化に対応できるかが、これからの時代に「求められる人材」「求められる企業」になるための鍵になりそうです。
5.新たな課題を発見し解決するスキル
次々に難題が生まれる新型コロナウイルスが私たちに突きつけたのは、高度成長期から平成にかけて日本人の働き方のベースにあった「正解を見つける」「一生懸命がんばる」といった価値観の限界でした。コロナ拡大中からコロナ後にかけては、過去の経験則が通用しない激しい変化の中で新たに発見した課題を、対話型チームで解決していくスキルが求められます。
このような考え方は、以前からパブリックスピーカーの山口周氏を中心に主張されていましたが、新型コロナによって、より鮮明になったといえます。
ここではコロナ後に重視されるスキルにフォーカスしました。個々のスキル獲得も大事ですが、それ以上に重要なのは「コロナ前とコロナ後は全く異なる世界である」と認識することかもしれません。
経験則やこれまでの価値観をいったんリセットして、新たなビジネスの世界へ踏み出す勇気を身につけましょう。
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