この夏いちばんのニュースは、日経電子版が7月7日に特報で流した「リニア全線着工へ、静岡知事が容認」ではないでしょうか。少なくとも不動産オーナーにとっては、不動産市場・市況を劇的に変えるリスク要因です。強い関心をもって行方を追いかけるべきでしょう。
静岡県の鈴木康友知事が、JR東海が手がけるリニア中央新幹線の静岡工区について着工容認を表明しました。東京・品川―名古屋間で唯一未着工だった同工区の政治障壁がなくなり、最短で2036年と見込まれる開業へ大きく前進することになります。
東京・名古屋・大阪の3大都市圏を約1時間でつなぐ日本の「大動脈」実現――。私はいま、東京の多摩地区に住んでいますが、東京・大手町の日本経済新聞本社まで1時間5分~1時間10分かかります。リニアにあてはめると、私はちょうど大阪から通勤できる計算です。
人口でいえば首都圏3700万人、中京圏1100万人、近畿圏1800万人――あわせて6600万人の「メガ経済圏」が新大動脈誕生によって生まれることになります。
個人的な話にはいりましょう。日経電子版に掲載されたマップをご覧ください。奈良市を通過していますよね。私が奈良出身で、実家が薬師寺・唐招提寺の近くであることは何度か伝えましたが、空き家になった実家をいつ手放すか、じつはリニアの延伸工事計画をずっとモニタリングしていたのです。
法律上、不動産仲介業者は公開情報しか言えないので何も知りません。同級生が県上層部に務めていたので水面下の動きを探りました。生々しいことは明かせず申し訳ないのですが、想定通りなら実家から車で10分ほどの場所にリニア新駅が誕生する可能性があります。
そう、なんと奈良の実家から東京へ通勤……!
しかし、いろいろ考えました。名古屋までの開通予定が早くて10年後。2036年です。大阪までの延伸が2045年以降。さらに10年ほど先です。これは最短シナリオで、①南アルプスの難工事②財源不足③人材払底と資材費高騰④大震災――など不透明要因は山積しています。
リニア開通による奈良市の地価上昇は現実味を帯びてきても20年前後先だろうという結論に至り、結局売却しました。
さて、翻って首都圏の投資不動産の是非を考えてみましょう。東京・名古屋・大阪が「一つの経済圏」になるから名古屋⇒東京勤務、大阪⇒名古屋勤務といった新しい流れ、あるいはその逆の動きが現実味を帯びるでしょう。東京一極集中が一部緩和され、地価上昇ペースが鈍化するのは必至でしょう。住宅価格格差が縮小する要因にもなります。
一方、名古屋は大幅上昇の可能性があります。奈良の事例ではないですが、駅へのアクセスに恵まれる沿線都市も一変するかもしれません。リニア駅近隣や徒歩20分圏あたりまでは土地の評価が見直されるでしょう。
ローカルのゼネコンなどを中心にリニア特需が起こるとみています。株式市場では関連銘柄も物色され、不動産と株式双方で「リニアバブル」が起こるかもしれません。
不動産で資産形成を手掛ける個人は若年層も多く、20年30年のスパンで運用しておられるはずです。だからこそ、リニア開通が引き起こす超長期未来の地殻変動については、要注目かと考えます。
ちなみに私は70~80歳。生きているかどうかさえわかりません。生きていれば、地価や不動産価値にはすっかり関心を無くして、リニアに乗ってふるさとに帰ることを望んでいることでしょう。
【参考記事】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC026Q00S6A700C2000000/
著者・監修者プロフィール

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日本経済新聞社 コンテンツプロデューサ-兼アセットリード物件オーナー
●1989 年入社、証券部配属。東証や日銀、NY駐在など主に金融・資本市場担当。
BSテレビ東京「日経モーニングプラスFT」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター
テレビ解説のほか日経電子版開発、コラム執筆など「話す」「創る」「書く」の三刀流をこなす。
CFP®、1種証券外務員、シニアプライベートバンカー、宅地建物取引士。
●奈良出身。趣味は世界遺産巡り(現在43カ国・地域歴訪)、大型バイク、ドローン、ゲーム、競馬
●最新刊「50 代から輝く!『幸福寿命』を延ばすマネーの新常識」(日経出版社)など著書多数。




