不動産大手、全社が最高益、金利高・中東でもなお勢い

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ビジネスパーソンにとっても、投資家にとっても非常に注目度の高かった2026年3月期決算発表がほぼ出そろいました。昨年の関税ショックの後遺症や足元の中東情勢混乱がどう影を落とすか、あるいは急激な金利上昇による影響が広がるのかーー。リスク要因乱立の中で目が離せないシーズンでしたが、結論は絶好調でした。そして、とりわけ勢いを見せたのが不動産業界でした。決算内容はREIT(不動産投資信託)や実物不動産などの投資のヒントにもなるのでしっかり分析していきたいと思います。

■前3月期実績は全社最高益&最高配

本投稿では、総合デベロッパー大手5社に加えて12月期決算の東京建物と合わせた6社で集計しました。全社が増収・営業増益で、配当も過去最高とこの数十年でもまれにみる好決算となりました。野村不動産ホールディングス(HD)と三菱地所は売上高が2ケタの伸びを記録しました。AI半導体関連業種やIT関連企業では高水準の設備投資を背景に2ケタ増収もありえますが、不動産でこれほどの伸びは私もあまりみたことがありません。野村不HDを過去25年前までさかのぼって調べましたが最大の伸び率を記録していました。

業績をけん引した主因の1つはオフィス賃料の上昇です。三菱地所は26年3月期に5~20%超引き上げ、平均改定率は10%を超えました。住友不動産も同期間に最大20%超、平均で7%程度賃料を引き上げました。

分譲マンション事業も好調です。こちらのほうが個人の不動産オーナーにとっては気になるところでしょうが、各社とも平均販売単価で1割前後上げたとみられます。

好業績見通しを背景に、株主還元も強化し、増配だけではなく高水準の自社株買いを実施して資本効率の改善に努める方針です。

■今期見通しもはさらに勢い

では2027年3月期の見通しはどうでしょうか。これも仰天、全6社すべてが最高益・最高配なのです。6社のうち三菱地所や東急不動産ホールディングス(HD)など4社が2ケタ増収となり、むしろ前期より勢いを増す格好です。

日本経済新聞社がまとめた2026年上期のオフィスビル賃貸料調査によれば、東京の指数は31年ぶりの高値になりました。人材獲得を急ぐ企業による優良ビルへの移転需要が旺盛で、いわゆる「貸し手優位」の賃料相場が鮮明になっているためです。

長期金利は5月に入って上昇に拍車がかかっています。2%超えで大騒ぎしたのも今は昔。足もとは2.6%を突破して約29年ぶりの水準になりました。早くも3%の大台を視界にとらえる市場関係者も表れ始めています。

個人の不動産投資ではないですが、デベロッパー各社も巨額の資金を借り入れて開発を進めるだけにどう転んでも金利高は逆風です。しかし、実際には長期・固定での借り入れも多く、悪影響が即座に広がるわけではなさそうです。むしろ、その間に賃料をあげて利益を確保すれば金利高に負けない収益構造を作り上げることができるというわけです。

そして三井不動産は新規入居や契約更新時に消費者物価指数(CPI)に連動して賃料が上がる「インフレ条項」の導入を進めています。新たな動きは不動産業界の収益を支えると同時に、マンション賃料などの契約のあり方にも一石を投じそうです。アセットリード社でも是が非でも導入してくれというムードが個人オーナーの間で広がると思いますよ笑

もちろん、良い話ばかりではありません。中東情勢混迷の影響はどうなのでしょうか?内需企業だから無関係、ではありません。建築資材や化学系素材は供給不安が一気に高まっています。内装などを含めた施工が足踏みし、新築マンションの契約者への引き渡しが遅れる可能性もあります。工期や納期がずれこめば、売上高の計上時期が先送りとなり、結果的に利益見通しの下方修正につながります。

異常な高騰が続いていた賃貸マンションは賃料にそろそろ天井感が出てきたとの指摘もあります。しかし、供給が止まることはないにしても細る可能性がある以上、需給ひっ迫状態はまだまだ続きそうです。投資不動産系デベロッパーは中堅・中小企業が多いため、供給戸数を確保するのがさらに大変になるかもしれません。

その一方、不動産オーナーにとっては既存の物件の値落ちが考えにくく、中古物件でも需給ひっ迫から価格は底堅く推移しそうな雰囲気です。

■インカムリターンもREITより妙味?

さて、次は投資家の視点で分析してみましょうか。総合不動産各社は潤沢なキャッシュと好調な決算を背景に配当も大幅に上積みしています。しかし、5月14日時点での予想配当利回りは1%台半ばから4%台にまでかなり大きく差が広がりました。

三菱地所と住友不動産は株価がかなり上がっていたことが背景でしょう。一方、野村不HDと東急不HDは4%前後です。ちょっと不可解ですね。

売上高営業利益率は野村不HDが12.9%、東急不HDは同13.5%で、グローバル企業の代表格、ソニーグループの利益率13%と肩を並べます。稼ぐ力は同レベルですが、ソニーグループの配当利回りは1%未満。ぶっちゃけ、不動産各社のほうがバリュエーション的には妙味があるといえるでしょう。

国内上場のREITは14日時点で3%台半ば~6%台後半のゾーンです。単純なインカムリターンだけではなく、成長力をも考慮すると、REITよりも株式のほうが魅力的に感じられるかもしれませんね。

■日本最高層ビル、八重洲北側に生誕~都庁を眼下に

アセットリード社は東京・西新宿に本社があるので、お邪魔するときは新宿高層ビル群をくぐり抜けることになります。しかし、こんな新宿高層ビル群ですら「眼下」に見下ろす日本一の超高層ビルが東京・八重洲に誕生します。トーチ・タワーです。

高さ385m、62階。新宿の東京都庁ビル(243m)のさらに6割ほどのっぽになる計算です。日本経済新聞社は東京・大手町にあり、日本橋にある東京証券取引所の記者クラブまで歩いて行き来することが多いので、この巨大高層ビルの建築現場をいつも横目でみています。

完成は2年先のようですが、オフィスの供給面積がこれで一気に増えます。需給緩和で賃料の上昇が止まるのか、これほどのビル建設は先行きの自信の表われなのかーーまあいずれにせよ、世界に誇るインフラの誕生だと前向きにとらえておきましょう。

じつは私、1999年に初めて企業財務の担当を命ぜられた際、不動産業界の受けもちだったんです。当時はデフレで、どの不動産会社も不良債権処理に苦しんでいました。一部のデベロッパーが「地上げ屋のドン」と言われるなどきな臭さの印象が持たれていた時代だったのです。

ただ、どの社も我々マスコミには真摯に接してくれました。住友不動産には新宿の通称「住友三角ビル」の売却をスクープさせてもらったし、社長さんからはお歳暮でマツタケをもらった記憶もあります。三井不動産からは自社が出資するオリエンタルランド「東京ディズニーランド」のパスをもらいました。良くも悪くもメディアとは昭和のベタベタ関係でして、楽しくお付き合いさせてもらいました。

話がずいぶん脱線しましたが、要は不動産業界もIT産業よろしく成長戦略に舵を切っていることを伝えたかっただけです。

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今回は決算分析をつぶやいたので内容が難しいと感じた方も多いと思います。しかし、ビジネスパーソンや投資家にとって財務会計は必須のリテラシーです。ましてや、不動産オーナーであればバランスシートを楽々と読み解ける力が求められます。この夏には会計の基礎力を底上げするノウハウものを長編でつぶやこうと考えています。

【参考記事】

不動産大手5社、最高益 今期 都心オフィスの賃料上昇https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO96216080T10C26A5DTC000&scode=8801&ba=1

著者・監修者プロフィール

田中彰一 (たなかあきかず)
田中彰一 (たなかあきかず)
日本経済新聞社 コンテンツプロデューサ-兼アセットリード物件オーナー

●1989 年入社、証券部配属。東証や日銀、NY駐在など主に金融・資本市場担当。
BSテレビ東京「日経モーニングプラスFT」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター
テレビ解説のほか日経電子版開発、コラム執筆など「話す」「創る」「書く」の三刀流をこなす。
CFP®、1種証券外務員、シニアプライベートバンカー、宅地建物取引士。
●奈良出身。趣味は世界遺産巡り(現在43カ国・地域歴訪)、大型バイク、ドローン、ゲーム、競馬
●最新刊「50 代から輝く!『幸福寿命』を延ばすマネーの新常識」(日経出版社)など著書多数。