ここでは、不動産投資とさまざまな資産運用の利回りを比較してみます。具体的に取り上げるのは、株式・投資信託・預貯金・国債などですが、それぞれの特徴を踏まえた上で、どのような考え方でポートフォリオを作成するのが理想かを解説します。
不動産投資は空室率を考慮する必要があり、修繕費や融資を活用していれば毎月の返済などのコストも掛かるため、実質利回りで考えることが重要です。不動産の場合は物件ごとに個別条件が異なる性質が強いため、以下では便宜的に表面利回りで比較していきます。
また、表面利回りが同じケースでも融資を活用することで実投資額を抑えることが出来るのも不動産投資の強みであり、その場合、投資家が捻出した実投資額に対する利回りは大きく上昇することも不動産投資の特徴と言えるでしょう。
東証1部の株式と不動産投資の利回りを比較してみる
2018年2月時点の日経平均225銘柄「予想配当利回りのトップ10」の平均利回りは3%~4%台という結果でした。しかし、これはあくまでも上位銘柄に絞った平均配当利回りであり、東証1部全銘柄になると1.58%(2月22日時点)と予想されています。
この予想が出された2018年2月25日は、アメリカの金利上昇などの懸念材料によって株価が暴落した直後です。一方で、2017年の日本経済は比較的堅調だったこともあり、配当利回り自体は安定していた時期と考えられます。2018年秋以降は、中国とアメリカの経済戦争への危機感から、企業経営の環境が不安定です。そのため今後、平均配当利回りが下がってくる可能性も否定できません。
こういった背景を意識しつつ不動産投資に目を転じると、都心、好立地の新築物件の表面利回りは4~5%前後のケースが多く、大きくいえば、日経平均225の高配当トップ銘柄と不動産投資の表面利回りは近いと考えられます。また、不動産投資は流動性が低い分、景気の影響を受けにくいという特徴があります。景気が後退すれば、株価は敏感に反応します。配当が高くても株価が低下すれば3~4%程度の配当分の利益は消えてしまうでしょう。株式投資よりも不動産投資の方が値動きが緩やかな分、不動産は価値の暴騰率も緩やかです。
ベンチャー企業株式、投資信託の場合は?
株式の配当利回りをチェックする時に注意したいのは、ベンチャー企業の場合は、業績が好調でも配当利回りがない、あるいは、かなり低めに設定していることも少なくないという点です。これは投資家へのリターンよりも、将来の成長を支える設備や人材への投資を重視することなどが理由です。
このように株式の場合は、不景気の影響や会社の方針で配当利回りがないことも珍しくありません。そうなると、株式の値上がりによる売買益期待になります。これが難しい場合は、投資によるリターンは一切なくなります。
株式の配当利回りと似たものとしては、投資信託の普通分配金もあります。こちらも株式同様、景気の影響をダイレクトに受けるので、分配金が出せなくなったり、元本割れのリスクがあったりします。この点、入居者がいれば、常に利回りが得られる不動産投資は安定性においては断然有利です。
預貯金・国債と不動産投資の利回りを比較してみる
現在の日本は、超低金利時代が続いていますので、預貯金よりも株式や不動産投資の利回りが有利ということは誰の目から見ても明らかですが、具体的にどれくらいの差があるかを再確認してみましょう。
普通預金の利率は、銀行によって大きく異なります。たとえば、A銀行に預けた利率が0.001%ということもあれば、B銀行の利率が0.15%ということもあります。そこには100倍以上の差があるものの、株式や不動産投資の利回りとはいずれも比べものになりません。さらに金融機関への預金は、売買益のキャピタルゲインがないため、国内では大きく資産を増やす効果がまったくありません。
個人向け国債も預金と同様に安定度はあるものの、利回りはかなり低めの設定です。たとえば、SBI証券で個人向け国債変動10年を購入した時の年利率は税引前0.72%(税引後0.576%)です。預金の利率に比べたら高い設定ですが、他の投資よりもかなり低めです。
ローリスク×ミドルリスクを組み合わせることが大事
ここでは単純な比較をしましたが、だからといって、利回りが高い投資にすべてのお金を投入すべきということではありません。資産形成では、リスクを分散したポートフォリオが大事です。
ポートフォリオを作成する時には、利回りが高めの資産運用を組み込み、複利効果やレバレッジ効果を狙うことも大切です。リスクヘッジをしすぎると、資産を増やす効果が極端に低いポートフォリオになります。それでは、そもそも資産運用をする意味がなくなります。
また、年齢によっても取るべきリスクは異なります。退職金を株式投資などリスクの高いアセットに投資して、万が一、暴落してしまえば取り返しがつかないケースもあるでしょう。逆に20代や30代など、時間を味方につけることが出来る年代の方は、高いリターンを狙いリスク資産の割合を高めてもよいかもしれません。ローリスク、ミドルリスクの投資をうまく組み合わせたポートフォリオをプランニングし、未来を大きく変えていきましょう。
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