連帯保証人になっている場合を除き、配偶者の借金を返済する義務はいりません。このことを理解していれば、夫婦のダブル口座で資産形成・投資することがリスク回避になることがわかります。詳しく解説していきます。
老後のための資産形成で資産を減らしてしまうことも
「老後に2,000万円不足」問題によって、老後のための資産形成や投資に関心を持つ人が増えました。危機感があると資産形成のメリットにフォーカスしがちになりますが、当然ながら資産形成や投資にはリスクがつきものです。
投資信託などのリスクの低いといわれる金融商品でも、元本割れを起こす可能性は当然あります。株の信用取引で大きなリターンを狙えば、元本割れどころか借金を作ってしまうリスクもあります。
夫婦の場合、どちらかの口座で資産運用をすることが多いと思いますが、そこで多額の借金を作ってしまった場合、そのパートナーは借金を肩代わりしなければならないのでしょうか。
連帯保証人になっていなければ、パートナーの借金は返さなくていい
結論から言えば、たとえ夫婦でもパートナーの借金を返済する義務はありません。借金から逃れるために偽装離婚をしようとする人がいますが、そもそもパートナーの借金を返済する義務がないので、離婚は無意味です。
民法第761条には「日常の家事に関しての債務については連帯して責任を負う」とあります。「日常の家事」とは、日用品や医療費、子どもの教育費などのことで、投資の失敗で作った借金などは含みません。借金の原因がギャンブルやショッピングなどでも同様です。配偶者が借金を返済する義務はないのです。
ただし、連帯保証人になっていれば返済義務が生じます。夫婦かどうかは関係なく、連帯保証人が赤の他人でも返済義務があるのと同じです。
融資を受ける際、配偶者の連帯保証人になることを求められることがありますが、「返済不能になって家庭が崩壊するリスクはないか」「保証人になるのは絶対条件か」などを確認するべきでしょう。
夫婦のダブル口座で資産形成をすればリスク回避に
これらを踏まえると、資産形成や投資は夫婦どちらかの口座で行うよりも、夫婦それぞれの口座で行ったほうがリスクは小さいと言えます。たとえ夫婦のどちらかが借金を抱えて破産したとしても、パートナーへの影響はないので共倒れすることはありません。
また、口座を分けておくことで、それぞれの考えに沿った資産形成や投資ができます。たとえ夫婦でも、資産形成の考え方が一致するとは限りません。たとえば、レバレッジを利かせて大きな利益を狙いたいと夫と、手堅く積立式で貯めたい妻が、折り合いをつけながら運用するのは難しいでしょう。それぞれの口座があれば、夫婦それぞれの考えで資産運用ができます。
NISAやiDeCoの優遇措置をダブル口座で広げられる
ダブル口座での資産運用には、さらにメリットがあります。
最近注目を浴びている資産運用に、NISAやiDeCoがあります。NISAは、NISA口座で株式や投資信託などに投資した場合、本来利益に対して約20%かかる税金が非課税になる制度です。
iDeCoは、国民年金や厚生年金のような公的年金とは別で老後に備える私的年金制度です。掛金、運用益、年金受取それぞれについて、税制上の優遇が受けられます。
NISAやiDeCoを利用するためには専用口座の開設が必要ですが、1人1口座までと決められています。つまり、夫婦でそれぞれ口座を持てば、1世帯で2人分の優遇措置を受けられるのです。
ダブル口座のメリットについてお話してきましたが、口座を分けたとしても夫婦の資産は原則的に夫婦2人のものです。それぞれの口座を持っているからこそ、しっかりと情報を共有し、よく話し合った上で資産形成を進めていくことが大切です。
これを省くとお互いの資産状況がわからなくなってしまうので、注意が必要です。
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