一般的に、住宅ローンを組む場合は団体信用生命保険(以下、団信)に加入します。保険金が支払われる条件は基本的に死亡や所定の高度障害ですが、がんや三大疾病などまでカバーするものも増えています。あらためて、団信の商品内容と保障範囲を見ていきましょう。
団体信用生命保険(団信)とは
団信は、住宅ローンや不動産投資物件で融資を受ける際に、ローンの債務者を被保険者とし、債権者である銀行やモーゲージバンクなどが保険契約者、保険金受取人となるものです。個人契約でなく法人契約の一形態であり、1つの契約で複数のローン債務者を被保険者とする団体保険です。
ローンを組む際、金融機関によっては団信への加入を必須としているところもあります。しかし、全員が加入できるわけではありません。生命保険なので、被保険者の健康状態が問われるからです。加入条件が緩和された団信もありますが、その分保険料は割高です。
一般的に、団信の保険料は金利に含まれているケースが多いです。住宅金融支援機構は2017年10月にフラット35を変更し、補償内容を以下のように拡充しました。
これにより、これまで必要だった特約保険料の支払いが不要になりました。
なお、ローン債務者は保険料を負担しますが、団信の受取人はあくまで金融機関であるため、ローン債務者は生命保険料控除を受けることはできません。税制面での優遇は、住宅ローン残高に応じた住宅ローン控除のみです。
団信の保障内容
最近は、団信の種類が増えています。以下で代表的なものを見てみましょう。
1 がん保障特約付き団信
がん保障付き団信は、がん保障の責任開始日(融資実行後通常91日目または3ヵ月1日目)以降に悪性新生物(上皮内新生物は対象外)に初めてかかり、医師により診断確定された場合に保険金が支払われます。
2 三大疾病保障特約付団信
死亡や所定の高度障害に加え、三大疾病(悪性新生物・急性心筋梗塞・脳卒中)にかかり、所定の状態になった場合に支払われます。支払い条件は金融機関によって多少違いますが、急性心筋梗塞は初診日から60日以上労働制限を必要とする状況が継続したと医師によって診断されたとき、脳卒中は初診日から60日以上、言語障害、運動失調、身体の麻痺など後遺症が続いたと医師によって判断されたときに保険金支払いの対象となるケースが多いです。
3 七大疾病保障特約付団信
上記に加え、高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変にかかり、就業不能期間が12ヵ月または13ヵ月を超えて続いた場合に保険金が支払われます。
4 十一疾病保障特約付団信
上記に加え、大動脈瘤・大動脈解離、上皮内新生物、悪性黒色腫以外の皮膚がんにかかった時に保険金が支払われます。悪性新生物と診断確定された場合のほか、所定の生活習慣病により180日以上継続して入院した場合にも支払われます。
5 就業不能保障特約付団信
けがや病気などの原因を問わず(一部精神疾患等を除く)、所定の就業不能状態となり、その状態が3ヵ月を超えて継続した場合、住宅ローン返済月額と同額の給付金が支払われます。それ以降、所定の就業不能期間が9ヵ月(不支給期間を加えてトータルで12ヵ月)を超えて継続した場合は、住宅ローン残高相当額の保険料が支払われます。
これらは一例であり、特約の有無などによって保障内容は変わります。加入時に保障内容を確認し、正しく理解したうえ加入することが大切です。
団信保険料
例えばフラット35の機構団信の場合、団信を外すと金利が0.2%下がります。一方、新三大疾病付機構団信を申し込んだ場合は、介護保障と身体障害保障が加わるため金利が0.24%上乗せされます。
まとめ
低金利時代においては、各金融機関のローン金利はほとんど変わりません。その意味で、現在の住宅ローン選びにおいては団信の保障内容が重要なファクターになっていると言えるでしょう。
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