世界的なベストセラー「21世紀の資本」(みすず書房)が発売されてから約8年。トマ・ピケティが提唱した「所得成長率<資本収益率」という考え方が広がり、「労働=むくわれない」「資産運用=効率がよい」という意見も目立つようになりました。しかし、現実的には、労働所得と資本所得の両方があるのが理想という考え方もできます。
資本所得だけなら大損失、イコール破綻になるタイミングも
労働所得と資本所得の両方があった方がよい理由としては、「資本所得の損失発生時も労働所得でリカバリーできること」が挙げられます。もし、資産運用や投資による資本所得しかなかったら、予想以上の損害をこうむった時に破綻する可能性もあります。これに対して、労働所得を得ていれば損失をリカバリー、またはその間の生活費を維持することも可能です。
もちろん、労働所得を捨て資本所得の獲得に注力することで、より高いリターンが得られる人もいるでしょう。たとえば、サラリーマンとトレーダーをしていた人が専業トレーダーになることで、より大きなリターンが得られるようなケースです。しかし、これが実現できるのは高い学習意欲を持ち、類い希な能力と運を合わせ持った、ごく一部の投資家だけかもしれません。
労働所得を資産運用に回して最短で目標達成
労働所得と資本所得の両方を得た方がよい理由は、もうひとつあります。それは、「労働所得があることにより最短で目標を達成しやすいこと」です。労働所得をそのまま浪費してしまえば意味がありませんが、一定の割合を残し、それを資産運用の元手にすることで効率的に資本所得を増やしやすくなります。資本所得を複利によって増やすとともに、労働所得を元手にし続けることで、両輪の資産増加の効果が得られる可能性があるのです。
これを証明するように、莫大な資本所得を得ている投資家でも、「セミナーを開催する」あるいは「サロンを運用する」などを通して、労働所得を得ている場合がよくあります。
このように考えていくと、少なくとも「これだけは資産運用で残したい」という目標額を達成するまでは、本業(労働所得)を続けながら資産運用をしていくのがよい、という考え方もできます。
手間をかけない投資には「投資自動積立」がある
労働所得と資本所得の2つの軸で長期的に稼ぎ続けるには、「資産運用になるべく手間をかけないこと」が大事です。なぜなら、資産運用に工数をかけ過ぎてしまうと、労働に回す時間や労力が失われ、労働所得が思ったように生み出せなくなる可能性があるからです。
では、手間のかからない投資とは具体的にどのようなものでしょうか。一例としては、「投資信託(投信)自動積立」があります。これは自身が指定した銘柄の投資信託を毎月自動で買い足していくものです。はじめに銘柄を選び、購入額を設定すれば、後はほとんど手間がかかりません。加えて、長期運用が前提ですので、株価や為替のように短期的な値動きを気にする必要もありません。
「投信自動積立」の他のメリットとしては、少額で積み立てができる、あるいは、購入単価を平準化することで安定した資産運用ができるなども挙げられます。
「不動産投資」も労働所得と資本所得の両立向き
もうひとつの手間のかからない資産運用は「不動産投資」です。投信自動積立と同様、スタート段階でどのような物件を購入するかさえ決めてしまえば、その後の入退去手続きや家賃入金は管理会社がコントロールしてくれます。
ただし、管理会社なしで投資家自らが物件を管理する場合は、状況が一変します。面倒な手続きや管理をすべて投資家自身で行う必要があるため、どうしても工数がとられます。それにより、本業への多少の影響は覚悟しなければなりません。本業と不動産投資を両立させていくには、信頼できる管理会社の存在が必須です。スタートする時は、物件選びと併行して、管理会社もしっかり精査していきましょう。
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