孫を授かって思う不動産の承継

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この3月に初孫を授かり、歓喜雀躍に沸いたのも早や8カ月。ますます可愛さに拍車がかかっています。でも、自分の長男長女が生まれたときとはちょっと違う感覚ですね。

子供と孫の違いはなにか?子供は育業です。まあ早い話家事と同じくプライベートでの仕事ですよね。子供をしつけ、叱り、立派な成人に導くための苦労も伴います。だって親は「保護者」でしょう?

孫は違います。ご対面したときだけ可愛がるだけ。孫と戯れて遊んで笑顔をみて、要は自分が癒されるんですね。育児という責務がなく、負荷がかからないのです。子供とは別物なのだということを、孫を抱いて改めて確信しました。 一方、孫が生まれたということは自分もまた一歩、人生の終わりに近づいていることを意味します。私は11月にまた1つ齢を重ねます。最近は寿命が長いので実感がないのですが、ひと昔前なら相続や贈与を真剣に考える時期です。

投資不動産の強みの1つは相続対象となる課税財産を大きく減らせる点にあります。私も当初はそのメリットばかりに目がいっていましたが、最近の不動産価格高騰で注意が必要になってきました。それは相続税のためのキャッシュが不足することです。

現在の非課税枠は原則、「3000万円+相続人×600万円」です。教科書事例ですが単純計算をしてみましょう。課税財産ベースで1戸3000万円の持ち家と投資マンション1500万円があったとします。合計4500万円。世帯主がなくなり、妻と子1人が相続人なら4200万円が非課税です。課税対象は差し引いて300万円。税率は10%なので30万円です。なんの問題もありません。

しかし、都心でのマンションは異常な高騰が続いています。先の事例で1戸6000万円、投資マンション3000万円と2倍に上がったらどうでしょうか?課税財産は4800万円。税率は20%になり、960万円。控除額を差し引くと760万円!

みなさん、現金ですぐに約800万円を用意できますか?私はキャッシュですぐ出せるのは200~300万円ほどです(ほんとうはこれもローンの繰上返済原資に充当したい)ほとんどは金融資産や定期預金などにはまっているはずです。

投資不動産1戸でこの状況です。複数戸お持ちのオーナーはどうなるのでしょう?1000万円や2000万円を現金で準備する場合、結局原資をひねりだすために不動産を売却することにつながりかねません。アセットリード物件などの流動性の高い不動産はすぐに売れるかもしれませんが、それでもあわてて売ると足元をみられて売却金額が少なくなる場合があります。

不動産価格の高騰自体はありがたいのかもしれないのですが、相続の視点では何年も前から長期戦略を立てて動かないと後継者に迷惑をかけることになります。

選択肢は大きく2つ。①不動産を相続させる②不動産を売って現金で相続させる、のいずれかです。①なら誰に相続させるかを決め、相続時の推定課税額などを試算する必要があります。②なら現金化のあと早い段階で生存贈与などに着手して節税に努める流れになるでしょう。

ことほど左様に不動産は資産形成に有力なのですが、次世代への承継を考える点で取り扱いの難しい資産です。難題はもっとあります。私の実家の恥をさらすことになりますが、父方母方とも「争族」が起こりました。特に父方は農業だったので農地などの分割をめぐり兄弟姉妹間でずっと揉めていたことを覚えています。金融資産ならお金はきっちり分割できるけど不動産は真っ二つに割れません。とにもかくにも10年未来をみて準備を進めないといけません。

今回の話は主にプライベートバンキングのテーマです。私がプライベートバンカーを目指す過程で税理士や公認会計士から学んだことです。不動産購入時は誰も教えてくれませんよね。不動産購入には購入をあおる人たちが群がってきます。不動産売却では売却をあおる利害関係者が群がってくるのです。オーナー様はしっかりリテラシーを身に着けて不動産投資を長期的に価値あるものに運営・運用していきましょう!

著者・監修者プロフィール

田中彰一 (たなかあきかず)
田中彰一 (たなかあきかず)
日本経済新聞社 コンテンツプロデューサ-兼アセットリード物件オーナー

●1989 年入社、証券部配属。東証や日銀、NY駐在など主に金融・資本市場担当。
BSテレビ東京「日経モーニングプラスFT」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター
テレビ解説のほか日経電子版開発、コラム執筆など「話す」「創る」「書く」の三刀流をこなす。
CFP®、1種証券外務員、シニアプライベートバンカー、宅地建物取引士。
●奈良出身。趣味は世界遺産巡り(現在43カ国・地域歴訪)、大型バイク、ドローン、ゲーム、競馬
●最新刊「50 代から輝く!『幸福寿命』を延ばすマネーの新常識」(日経出版社)など著書多数。