不動産投資は損益通算でサラリーマンにも節税可能!手堅い投資をしたい人必見

不動産投資

不動産投資で得た所得は不動産所得となります。サラリーマンで給与所得を得ている場合、給与所得の課税対象額を少しでも減らすことができないものかと考えるのは当然かもしれません。

そこで、これらの所得を有する人が節税として使えるのが「損益通算」という制度です。不動産所得と会社からの給与所得は所得の種類は異なるものの、総合課税といってそれぞれの所得を合算して税金を計算する仕組みになっています。そこが、不動産投資に節税効果があるといわれるゆえんです。このほかにも不動産投資をしていることで将来の相続でも節税効果が期待できます。

今回は、意外と手堅い投資として知られる不動産投資について、会社員が損益通算を通じて節税できる仕組みなどについて解説します。

不動産投資で資産形成しながら節税できる理由

最初にお伝えしたいのは、不動産投資はローリスクな投資であり、開始してすぐに一攫千金が狙えるような「おいしい」投資ではないということです。

サラリーマンであれば、会社をリタイアする前から将来的に不労所得を得る準備として着々と進めるタイプの「資産形成」とお考えください。このコツコツと進めた準備が花開いたとき、老後に確保できるお金に差がつきます。

一方で、サラリーマンのうちから不動産投資を行うことで、損益通算という仕組みを通じた所得税や住民税の節税などの節税効果を得ることができます。ここでは、不動産投資で資産形成をしながら節税できる理由を解説します。

不動産投資の節税効果① 損益通算で所得税・住民税の節税が可能

サラリーマンが不動産投資をする場合、会社から貰う給与所得と不動産所得の2種類の所得を得ることになります。

不動産投資とは、不動産物件を所有し、その不動産を賃貸の用に供することで家賃収入を得るという堅実な投資方法です。

しかし、それゆえに「実体あるもの=不動産」に投資せねばならず、とりわけ初期にはある程度のお金が必要です。始めてからしばらくは赤字が出てしまうケースも珍しくありません。そこで役立つのが「損益通算」です。

損益通算では、初期費用や修繕費などの経費がかさむなどして不動産所得が赤字となった場合に、サラリーマンとして得た給与所得と相殺することができます。

つまり、不動産投資で出した赤字を給与所得からマイナスすることができるため、合算したときの所得税の課税対象額が減り、結果として所得税が減ることになります。また、所得税を基に計算されるのが住民税なので、当然住民税も安くなるため節税効果が期待できることになります。

不動産投資の節税効果② 現金に比べて相続税で節税効果あり

とくに40~50代で、将来的に子どもに承継するための資産形成を考えているサラリーマンの方にも不動産投資はおすすめです。

その理由のひとつが、不動産投資では相続税でも高い節税効果が得られることにあります。財産を残すなら現金がいちばん、と思う方もいますが、現金の場合は相続税の課税財産としての評価額は額面どおりなので、現金2000万円を相続する場合は、そのまま2000万円に対して相続税が課税されます。

一方、不動産を相続する場合は、路線価額や固定資産税評価額に基づいて評価額が決まります。一般的に路線価額や固定資産税評価額は時価の7~8割程度となることが多く、また賃貸不動産の場合はさらに評価減が適用されますので、現金相続との差は歴然としています。

不動産投資の節税効果③ 経費として計上できるものが豊富

先ほど解説した損益通算は、たくさんの経費がかかる不動産投資の性格上、節税という意味合いでたいへん有効的な仕組みです。

不動産投資を行い賃貸で収入を得ようとすると、さまざまな経費がかかるため、一定の収入があったとしても赤字となることがあります。その赤字を会社員としての給与所得と相殺して税金を節税することが可能となるのです。

はじめのうちは「赤字が出て大変だな」と思っても、損益通算を通じた所得税の節税があるため、ダメージを最小限に抑えることができるといえます。なお、不動産投資で計上できる経費は主に以下のとおりです。とくにキモとなるのは、実際の支出を伴わずに経費計上できる「減価償却費」です。

・固定資産税や都市計画税
・不動産管理を委託する場合の手数料や管理費用
・修繕費(所定の範囲内)
・共用スペースの水道光熱費
・損害保険料(火災保険、地震保険、施設賠償責任保険など)
・広告宣伝費(入居者募集など)
・減価償却費

ほかにも経費として計上できるものはいろいろあります。

長期間経費として計上できる「減価償却費」とは?
不動産投資を行う際に経費の対象となるものはいろいろあると先ほどお伝えしましたが、その中でも「減価償却費」は長期にわたって経費として計上できる項目です。

土地や借地権といった価値の変わらないものには減価償却費は適用されませんが、経年劣化していく建物や設備は価値の減少に伴い減価償却費として経費計上することができます。

減価償却とは、購入した固定資産を、その物件の耐用年数に応じて分割して経費化することです。これにより建物や設備として支出した費用を減価償却の手続きを通じて、耐用年数の期間にわたって規則的に必要経費として計上することになります。

不動産投資では節税効果を強く実感できる人とできない人がいる?

不動産投資は、誰にでもいつでも必ず高い節税効果が得られるというわけではありません。不動産投資では、購入した物件や投資家のその他の所得の状況によっても節税効果が異なります。

ここでは、不動産投資の節税効果について、まことしやかに囁かれている情報の根拠について解説します。

所得が多い人の方が不動産投資で高い節税効果が得られるって本当?

所得が多い人の方が不動産投資で高い節税効果を得られます。例えば不動産投資は年収が900万円以上の人にだけ節税効果があると聞いたことはないでしょうか?これは所得税・住民税の税率が年収900万円から、それ以下の区分よりも10%も上がって33%となるためです。

不動産所得で赤字を出し、損益通算によって課税対象額が減った場合、税率が高いほど減額される税金も多くなることはいうまでもありません。しかし、年収900万円未満の人に全く節税効果がないという意味ではありません。

新築マンションに投資すると節税効果が低いといわれる理由

新築マンションを所有し家賃収入を得ようとしても節税効果が低いとされる理由は、先ほど解説した減価償却と関係があります。

新築マンションは中古に比べると耐用年数が長いので、購入費用を分割すれば自ずと1年あたりの減価償却費は減ることとなります。

経費が増えることによる損益通算の効果=所得税・住民税の節税効果という観点からすると、中古マンションよりは新築マンションの方が短期的な節税効果は確かに低いでしょう。

中古・築古マンションは節税効果に優れるといわれる理由

先ほどお伝えしたように、所有するマンションが新しいか古いかによって減価償却費は違ってきます。

中古マンションや築古マンションは耐用年数が短いため、期間は短いものの、1年ごとの減価償却費は大きくなります。経費がかさめば損益通算の仕組みによって課税される所得金額は減るため、短期的には高い節税効果を実感できるのです。

しかし、中古マンションや築古マンションの方が節税できると思い込み、古いマンションを購入することは早計かもしれません。詳しくは次章をご覧ください。

不動産投資には節税効果があるが本来の目的は節税ではない

不動産投資が節税に効くという言葉に踊らされてしまうと、本来の不動産投資のメリットを感じないまま失敗に終わってしまうおそれがあります。

不動産投資における節税とは、たとえば不動産投資の初期に経費がかさんだサラリーマンが、赤字を出した場合でも給与所得と相殺することで所得にかかる税金が減るといった程度のことです。

節税対策になるらしいからと築年数の古いマンションを買った場合、修繕費に大きな費用がかかるだけではなく、借り手が見つかりにくかったり、売却しようとしたときに売れなかったりするなどのデメリットも生じ得ます。

不動産投資本来の目的は、堅実な資産形成です。老後資金に対する不安が拭えない現代において、元気に働ける年代からコツコツと不動産経営をすることで、やがて安定的に家賃収入を得られ老後の暮らしが豊かになるように備えるということが本来の目的といえます。

また、不動産投資は投資家の死亡によってローンが完済扱いになり、不動産を家族に残すことができることから、保険代わりとして始める人も増えています。もちろん、私的年金にもなって、老後を頼もしく支えてくれるというメリットもあります。

「節税のために不動産投資をする」という発想では、不動産投資で得られるはずの安心や利益をつかみ損ねるおそれがあるので十分注意しましょう。

まとめ

不動産投資は相続税の節税対策としては確かに有効です。一方で所得税に関していえば、あまり情報に振り回されない方が良いかもしれません。節税にこだわりすぎるあまり、不要な支出を要することにもなり、また本来得られるべき収入を逃してしまうかもしれません。

不動産投資を始めることによって経費がかさんだとしても、その分損益通算のお陰で「所得税や住民税が軽くなる」といった程度の認識で十分といえます。

重要なのは、「将来のための資産形成」という不動産投資本来の目的を見失わないことではないでしょうか。

したがって、節税できるとかすぐに儲かるといった言葉をちらつかせるような不動産業者には要注意です。不動産投資はリスクが低い代わりに地道さが必要であるため、堅実で賢明な方におすすめの投資方法といえるでしょう。


著者・監修者プロフィール

八城孝夫 (やしろたかお)
税理士 渡辺正武税理士事務所
認定経営革新等支援機関、一般社団法人融資コンサルタント協会 認定コンサルタント。青山学院大学大学院法学研究科修了。事業承継対策、遺言・民事信託を活用した相続対策をはじめとした相続対策の企画立案など、おもに法人・相続領域の税務・コンサルタント業務に約20年従事。その他資金調達ならびに創業融資支援を得意とする。