社会的利益と金銭的リターンの両立を目指す「インパクト投資」の基本と展望

社会的利益と金銭的リターンの両立を目指す「インパクト投資」の基本と展望資産運用

2020年2月中旬~3月中旬にかけて世界の株式市場は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「コロナショック」に見舞われ、社会や経済に多大なダメージをもたらしました。新習慣を余儀なくされている中で投資に対する考え方にも変化が起きています。投資とは本来、投じたお金を増やして金銭的リターンを求めるものです。

しかしそれだけではなく、社会的な利益や貢献なども含めたリターンを期待する「インパクト投資」が広がりを見せています。すでにSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)やESG投資(環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資)など環境分野ではその流れが顕著です。現代では、金銭的リターンだけでなく「社会的な課題の解決や目的の達成に寄与するかどうか」が投資判断において考慮されつつあります。

その一つの形ともいえる「インパクト投資」を把握して今後の展望をつかんでおくのは、非常に有意義といえるでしょう。

インパクト投資とは?

「インパクト投資」という言葉自体にあまりなじみがない人も多いかもしれません。そのため、まずはインパクト投資の意味と定義について解説します。インパクト投資とは「金銭的なリターンだけでなく社会や環境における課題の解決を目指す投資」のことです。目指すのは社会や環境へのインパクトを生み出すこと、それが「インパクト投資」と呼ばれる所以です。

インパクト投資は拡大し続けている

インパクト投資の規模は着実に拡大を続けています。SIIF(一般財団法人 社会変革推進財団)が発表したデータによると、日本国内におけるインパクト投資(同データでは「社会的インパクト投資」と表現)の残高は以下の通りです。

年度社会的インパクト投資残高
2016年337億円
2017年718億円
2018年3,440億円

2016年には337億円だったものが2017年には718億円に倍増、2018年には3,440億円と5倍近くもの伸びを見せています。これはもはや爆発的なペースで拡大しているといっても良いでしょう。社会貢献はボランティアのような色合いが強くなりますが、無償の貢献であるボランティアだけではここまでの急拡大は難しいでしょう。

このデータからは、インパクト投資が企業への投資判断として必須の要件になりつつあることがうかがえます。

インパクト投資と慈善活動との違い

ボランティアや慈善活動は、善意による社会貢献のため、活動で見返りを求めることはありません。しかしインパクト投資は社会的な課題の解決に貢献することにより、金銭的なリターンだけでなく「企業価値の向上」「各種要件を満たす」など「社会的リターン」が得られます。そのため企業にとってインパクト投資は見返りを前提とした投資活動の一つといえるでしょう。

ボランティアや慈善活動の場合は、善意がなければ取り組みが促進されません。しかしインパクト投資は金銭的かつ社会的なリターンが見込めるため、自然に投資意欲が起きることが期待されます。この点がインパクト投資の大きな特徴であり、慈善活動との根本的な違いです。

インパクト投資の今後と、正しい向き合い方

インパクト投資の急速な成長は、社会全体のパラダイムシフトといえます。利益だけを追求する投資スキームの時代は終焉を迎えつつあり、社会的リターンが伴わなければ投資の真の目的を果たせなくなってきているのです。コロナショックはインパクト投資への関心を高めさせる契機となり、新しい社会的課題が大量に生まれ、それを社会全体で克服していく機運が高まりました。

投資もその一つとして、自分だけが利益を追求するのではなく「質」や「中身」が問われる時代に突入しています。前述したSDGsやESG投資は、持続可能な社会の実現や環境問題の解決を目指すものです。企業の利益に直接関係していなくても「こうした取り組みに積極的ではない企業とは取引をしない」という価値観が広がりを見せています。

企業にとってインパクト投資は生き残りに必要な戦略の一つになっているのです。従来からあるボランティアや慈善活動の考え方では、寄付や慈善活動などを「行っている」ということが意味を持っていました。しかしインパクト投資ではその中身が重視されます。そのため今後は企業内においても人材の育成や先端技術との融合による利益の最大化などが必要です。

これまでにはなかった課題への取り組みが企業価値を向上させるきっかけとなるでしょう。

アセットリードが4つのテーマで取り組むSDGsの主な事例を紹介

こうした社会的なパラダイムシフトやインパクト投資への関心の高まりを受けて、アセットリードも「環境への取り組み」「社会への取り組み」「魅力ある職場の実現」「規律ある組織体制の構成」という4つのテーマでSDGsに取り組み社会課題の解決を支援しています。主な活動内容は、以下の通りです。

  • パラリンピック正式種目であるブラインドサッカー支援
  • 自社開発マンションの屋上緑化(二酸化炭素削減、癒し効果、建物寿命延長、省エネのメリット)
  • 新しい都市環境を考える会を発足し、不動産投資による資産形成の環境を整備
  • SDGsへの取り組みで選ばれる企業づくり

アセットリードは、市場に供給する物件の品質はもちろんのこと、こうした取り組みで社会から必要とされる企業となり、不動産という枠にとらわれることなく、さらなる企業価値の向上を目指しています。

著者・監修者プロフィール

アセットONLINE編集部
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