8日の東京株式市場で日経平均株価が大幅安となりました。終値は前週末比2563円(3.85%)安の6万4024円で下落幅は3月9日(2892円)に次ぎ、2026年で2番目の大きさでした。一時は3100円以上下げる場面もありました。尋常ではないペースで上げ続けた日本株相場ですが、ひょっとしたら転機が訪れるかもしれません。
今回は世界同時株安の様相をみせています。前週末の米国株はもちろん、8日の韓国株式相場は下げがきついことから取引を一時中断する「サーキットブレーカー」が発動されるなどアジア株も全面安に追い込まれました。
引き金は前週末発表の5月の米雇用統計。毎度のことながら米国の労働指標がどういうからくりで日本株をここまで押し上げるのか、なかなかわかりにくいかと思います。ざっくりメカニズムを解説しましょう。
ここまで米国金融政策はずっと「利下げ」のベクトルが働いていたのでした。米国景気が好調でインフレ観測も出ていたため、利下げが小休止するとの見方は出ていましたが、先週の米雇用統計が想定外に強い数値だったことで一気に市場の見方が利上げまで傾いたのです。利下げから利上げへーーこの潮目の変化こそが日本株を含めた世界の株式相場を「逆回転」させました。
この1年ほどの株高エンジンは「AIによる爆発的な投資とインフラの再構築」です。ハイパースケーラーと呼ばれるAI関連企業は推定100兆円に迫るともされる投資を進めています。銀行からの借入金や社債発行などによって巨額の資金調達に動いていたわけです。
ここで利上げ、金利上昇となると一気に投資コストが膨らみます。そうでなくても市場では「これほどの巨額投資をして回収できるのか」という疑心暗鬼が渦まいていましたから、今回の利上げ観測とともにAI企業の先行きに警戒感を一気に増幅させる格好になりました。

AI・半導体企業だけで構成し、いま世界でもっとも注目度の高い株式インデックスがフィラデルフィア半導体株指数です。通称SOX。エヌビディアなど世界を支える主力テック企業で構成するSOXの下落率は10%を超えました。ダウ工業株30種平均が1%安、ナスダック総合指数が4%安。そしてこの日の日経平均株価が3%台の下落率だと考えるととんでもない暴落ですよね。
そして、日経平均株価もまたけん引役はソフトバンクグループ(SBG)とキオクシアホールディングス、東京エレクトロンとアドバンテストのAI半導体関連4銘柄でしたから、SOXの下げはそのまま日本株を直撃したというわけです。
米国金利が上がり、日本でも利上げ濃厚で長期金利が急上昇する中、株高・金利高の併存は教科書的にも難しいようにも思えます。
思い出してみてください。1年前の日経平均株価、いくらだったでしょうか?
そう、昨年の6月は3万円台で推移していたのです。3万円?いつのこと?と不思議に聞こえるかもしれません。そう、たった1年前は3万円台だったのです。私も時間感覚がずれそうです笑
日経平均株価が1年で4万円を超え、5万円もラクラク突破し、さらには6万円をもあっさり上抜けしてついには7万円を指呼の間にとらえようとするなどどこの誰が想像したでしょうか。市場関係者の相場見通しは毎年のことですが、全員大外れ。かすりもしていません。
手前みそですが、2025年暮れのラジオNIKKEIの番組に出演し、「バカが勝つ2026年」と公言しました。要するに2026年は想像を超えるような展開必至で、読みはすべて外れるためコツコツ時間分散で愚直に積み立てる投資家が最高のパフォーマンスを挙げる、という趣旨でした。
結果的に今の相場をもっとも的確に読み当てたと自負しています。今後は日米金利とも予断の持てない状況が続きそうで、少なくとも「AI株を何も考えずに黙って上値を追う」という投資は遠のきそうです。2026年の屈折点になるかどうか、株式相場の行方に改めて注目したいですね。
【参考記事】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL080O7TY6A600C2000000/
著者・監修者プロフィール

-
日本経済新聞社 コンテンツプロデューサ-兼アセットリード物件オーナー
●1989 年入社、証券部配属。東証や日銀、NY駐在など主に金融・資本市場担当。
BSテレビ東京「日経モーニングプラスFT」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター
テレビ解説のほか日経電子版開発、コラム執筆など「話す」「創る」「書く」の三刀流をこなす。
CFP®、1種証券外務員、シニアプライベートバンカー、宅地建物取引士。
●奈良出身。趣味は世界遺産巡り(現在43カ国・地域歴訪)、大型バイク、ドローン、ゲーム、競馬
●最新刊「50 代から輝く!『幸福寿命』を延ばすマネーの新常識」(日経出版社)など著書多数。




