混迷する世界経済の影響で、安全性が高いといわれる実物資産への注目が高まっています。実物資産の代表といえば金や不動産です。しかし両者は性格が大きく異なっているため、うまく組み合わせるとメリットがあります。
実物資産は価値がゼロになるリスクが低いのが強み
世界的危機のときには「金融資産よりも実物資産が強い」といわれます。両者の違いは、株式などの金融資産は価値がゼロになるリスクがあるのに対し、実物資産は価値が落ちても最低限の価値が残る点です。また実物資産は下落幅がゆるやかなのも特徴の一つ。金融資産は短期で暴落、場合によっては無価値になる可能性がありますが、実物資産は価値が落ちたとしてもある程度の期間がかかります。
先行きが見えない局面では、この2つの理由で実物資産を重視する投資家が増加するのです。
「世界的危機のときには実物資産が強い」説は本当か?
「世界的危機のときには実物資産が強い」という説はどこまで信憑性があるのでしょうか?実物資産の代表である金の価格推移で見ると第2次石油危機(1979年)、米同時テロ(2001年)、世界金融危機(2007年)など世界を揺るがす出来事が起きるたびに急騰してきました。2018年後半以降は米中経済摩擦などを原因に世界経済は混迷期にありますが、金の値動きを見ると急騰しています。「世界的危機に強い実物資産」を証明したといえるでしょう。
性格の違う実物資産を組み合わせて、資産の防御率アップを目指す
米中経済摩擦に限らず、世界経済危機はいつどこで発生するかわかりません。好況不況に限らず、資産のうち一定の割合を実物資産で持つことを意識することが賢明です。その際は、性格の違う実物資産を組み合わせてリスクヘッジすると効率的でしょう。たとえば同じ実物資産でも「金は投機色のある安全資産」「不動産は手堅い安全資産」という違いがあります。
これらを組み合わせることで資産の防御率を高めることも可能です。両者の違いを詳しく見ていきましょう。
金は変動率が高い実物資産。20年間で約 3.5 倍に値上がり
金に対して安定性のあるイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実は変動率が高い資産です。ポジティブに捉えれば利益を出しやすく、ネガティブに見ると損失が出やすいということになります。たとえば金1グラムあたりの年平均価格の推移(5年ごと)は次の通りです。
- 2018年 4,543円
- 2013年 4,453円
- 2008年 2,937円
- 2003年 1,399円
- 1998年 1,287円
1998年と2018年の金価格を比較すると、20年間で約 3.5 倍になっています。ただし右肩上がりではなく、暴落と暴騰を繰り返しながら価格を上げてきました。タイミングによっては損失リスクもあるので要注意です。
不動産は価格変動率がゆるやか。賃料によるリターンもある
金と比べると投資対象になるような不動産の価格変動率はゆるやかです。よくいえば安定性がある、悪くいえば大儲けしにくいというのが特徴になります。もう一つの違いとして金は価格上昇分のみがリターンになるのに対し、不動産は価格上昇分と賃料によるリターンが得られる点です。期待したような値上がりが起こらなくても賃料によるリターンで資産形成を進めることができます。
そのため金と組み合わせると安定感が増します。不動産の安定性を首都圏のマンションデータで確認してみましょう。首都圏の新築マンションの平均価格は、2018年には6,000万円近くの値を付けました。20年前の1998年前後には4,000万円台前半だったため、20年間で1,600万~1,700万円前後上昇しています。(※1)
物件価格は上昇していますが、金のように20年で3.5 倍以上と激しいものではありません。首都圏の分譲マンションの賃料(1平方メートル当たり)推移を見てみると、2009年の2,616円から2018年の2,760円と9年間で144円しか上がっていません。(※2)不動産は物件価格で見ても、賃料で見てもゆるやかに上昇していることがわかります。
※1 みずほインサイト「首都圏マンションは急落するか」
※2 東京カンテイプレスリリース 分譲マンション賃料(年間版)
このように同じ実物資産でも金と不動産は性格が大きく異なります。だからこそ組み合わせると安定感アップが期待できるのです。それぞれにさまざまな投資スタイル(金なら積立・地金・ETF、不動産ならマンション・REIT・クラウドファンディングなど)があるため、自分に合う商品を選択しつつ、うまく組み合わせながらリスクヘッジしましょう。
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