私はこの20年「お盆休み」を取ったことがありません。というより、取ることができません。
なぜでしょうか?ヒントは職業上の制約です。
え?マスコミ関係者はお盆もニュースがあるから当然だろうって?
なるほど。あながち的外れではありません。
答えは四半期の決算発表シーズンだから、です。
私は編集局証券部でマーケットや企業財務を主担当でしたし、いまも決算集計・収益分析などを現役で手掛けています。だから、集計がまとまるお盆の時期にはもっとも忙しくなるわけです。
■ □ ■
2026年4-6月期は過去もっともエキサイティングな四半期決算でした。 キオクシアホールディングスという会社をご存じですか?半導体のメモリーを製造する企業ですが、4-6月期の純利益がなんと前年同期比で46倍に膨らみました。
前例のない業績急拡大を織り込む形で、株価は年初からわずか半年で1万円前後から11万円超まで約11倍に上昇。年率換算で20倍超えの猛烈なパフォーマンスをたたきだしました。驚きはそれだけではありません。6月12日にはトヨタ自動車を抜き去り、時価総額で日本企業首位に躍り出たのです。
「びっくり仰天」はまだ続きます。その後は一転、急落して1カ月あまりで36000円台まで値を切り下げ、時価総額は瞬く間に3分の1に減ってしまいました。ジェットコースターよりも激しい乱高下といえるでしょう。
さて、こんな目も回るような株式の世界ですがみなさんは投資してみたいと思いますか?
前置きが長くなりましたが、今回は株式と不動産を組み合わせる「ハイブリッド」投資を考えてみたいと思います。
■ □ ■

まずはこの2つのグラフをご覧ください。私が発案したグラフで、世の中のどこにもないプレミアなグラフです笑
種明かしをしましょう。左は日経平均株価の過去10年間の値動きです。ただし、通常のグラフのように終値をベースにしているのではなく、赤色が年間高値、青色が年間安値です。右は実物不動産(首都圏)の賃料のグラフです。いくつかのシンクタンクの公表値を参考に年間の高値と安値を折れ線で結んでみました。
じつは株価水準や賃料そのものはたいした意味がなく、注目いただきたいのは高値と安値の幅です。左の日経平均株価は幅が広いですよね? 冒頭解説したキオクシア株は別格としても、株式相場全体でも毎年、かなり乱高下している事実がうかがえます。
他方、賃料はほとんど差がありません。常識で考えても今月の家賃は5万円だけど来月は55000円に値上がりし、翌々月は45000円に下がるといった話は聞いたことがありません。
この高値と安値の差こそ「リスク」なのです。リスクは本来、価格のばらつきを示しますが、要するに価格のブレですから高値と安値のゾーンに置き換えても問題ありません。
では次にどれだけの収益だったか、リターンを計算してみましょう。日経平均株価の終値ベースの年間リターンを計算し、直近5年間の平均値をはじいてみました。ざっと18%。2割弱ですね。非常に高いパフォーマンスです。5年で元本が2.2倍になるペースです。
不動産賃料はどうでしょうか?こちらは5年平均で5%。株式に比べるとだいぶ地味で低いといえます。
ここまででみなさんの感覚としてどちらに魅力を感じますか?
リターンだけの比較では、言わずもがな日本株の圧勝でしょうね。
■ □ ■
さてリターンだけでは日本株に軍配が上がるけれど、リスクを加味するとどうなるのでしょう?
じつは真に魅力があるかどうかはリスクで決まるのです。
私は競馬を覚えて以来毎度不謹慎なことに馬券を引き合いに出すのですが、馬券が的中して1万円が5万円になったとしましょう。元本が5倍、リターン400%になったケースを念頭に置いてください。
一方、ある銀行に10万円預金したら5000円の利子がつきました。こちらは元本の5倍ではなく5%のリターンです。
どちらが魅力的ですか?
まともな方であれば馬券になど見向きもせず、預金で5%をもらえる銀行に関心を注ぐでしょう。
これがキーワード、シャープレシオです。シャープレシオはどれだけのリスクをとって、どれだけのリターンを得たかという相対的な投資効率を測るスコアです。
競馬はたいてい1、2分で元本がゼロになります。競馬をやっている私に言わせると資産は絶対築けません。元本保証はできないけれど、絶対損をするということは保証できます笑。
預金はどうでしょう?10万円の元本はキャッシュを引き出さない限り、減りません。つまりリスクは実質的にゼロです。それで5000円を得たわけですから、究極に効率のよい投資だと言えます。
話を戻しましょう。日本株はグラフで見たように大きなリスクを前提に大きなリターンを得ます。ハイリスク・ハイリターンです。不動産賃料は、リターンこそまずまずですが、リスクも小さいわけです。

リスクに対するリターンを算出(5年平均)すると、日本株のスコアが42。それに対して不動産は106にはね上がります。リスクの割にどの程度収益を得たか、という効率性は不動産が株式を圧倒するのです。ちなみに実物不動産はミドルリスク・ミドルリターンです。
■ □ ■
実物不動産は株式とまったく違う属性を持ちます。ですから、投資戦略やポートフォリオの上ではどちらかを選ぶ、どちらが良いという議論ではなく、双方をうまく組み合わせるのがスマートではないかと考えます。
景気が良い局面では株式が資産価値を大きく増やしますが、逆に悪いときは目減りします。半面、不動産は上昇力も鈍いが急落するケースもまたないので「守り」に向いています。
株と不動産のハイブリッドにより、「攻守」二正面で強みを出せるポートフォリオができ上がるわけですね。
もっとも株・不動産と一口に言っても組み合わせは無限です。今回はシンプルに2つのパターンで考えてみましょう。投じる商品もシンプルに投資不動産以外は、NISAとiDeCoの両制度の対象商品であるインデックス(指数)連動型の投信だけとし、あとは現金に限定したいと思います。

1つは不動産重点(偏重)型です。ワンルームマンションなどを複数所有されるオーナーはこちらのタイプが多いかと思います。ちなみに私もこちらのポートフォリオのタイプです。
もう1つが不動産は1件。残りはNISAやiDeCoをフル活用するタイプ。NISAやiDeCoは株式が中心なので運用成績も年度によって起伏が大きいでしょう。
不動産は賃料という比較的安定したキャッシュを得られるのが魅力です。堅実でもありますが、シニアや高齢者など年金給付を上積みしたいひとにとってありがたみのある資産です。私の祖父も戸建ての借家を7件所有していました。昭和の時代では株式は競馬ほどではないにせよ投機的な対象でしたし、平成時代はデフレですから投資は「負ける」時代でした。ですから、ことさら不動産に資産価値を感じる世代だったわけです。
しかし、平成の終わりから令和にかけて株式投資を促す資産形成制度が抜本的に整備されました。岸田政権時には「資産運用立国」の大号令が出て、NISAの大改革やiDeCoの拡充が相次いで進められました。いまの現役世代は時間を味方につけることができるので、株式資産型で問題はないでしょう。
ただ、注意点があってNISAやiDeCoでは対象が主にインデックス投信で、かつ配当金や分配金を再投資して資産を増やす複利効果を生かすスキームです。資産は長期で増えますが、キャッシュは手元に入ってきにくいのです。生活やイベントに資金を利活用したいのならNISAやiDeCoだけでは不便な場合もあります。そこで1戸は不動産を保有し、株式との併用型で資産を増やすという戦略も有効ではないかと思います。
また、NISAやiDeCoは名義人が亡くなった場合、全資産が相続時の課税対象になります(iDeCoは一部非課税)。それに対して不動産はたいていのケースで半分程度に課税所得が圧縮されますから、配偶者や子供など資産承継人がおられる場合は、不動産を組み合わせるほうが有利だと思われます。
■ □ ■
ことほど左様にポートフォリオ設計は難しいです。好き嫌いだけでなく、年齢や世帯構成で実利に跳ね返ります。機会があれば詳しくお話しますが、年金戦略はもっと難解ですよ。就労によって年金が上積みされたり、カットされたり、あるいは給付時期を早めたり遅らせたりすることで何百通りもの選択肢が増えます。
年金と不動産はじつはこの点で似ているのですよ。マーケットの気分次第(笑)で資産価値が激しく増減するNISAなどと異なり、不動産はある程度の将来予測ができます。年金も自分自身の意図で給付額を設計できるわけです。
資産構成の階層で言えば、1階部分の国民年民と2階の厚生年金、さらに3階に相当するiDeCoに投資不動産と就労――の合計5要素の設計の成否で老後給付額は年間100万円以上差が開き、それが終身で続きます。
恐ろしや。このあたりの水準は著名ファイナンシャルプランナーでも誰ひとり成し得ていないレベルかと思われますが、私自身は未踏の領域をぜひカバーしてみたいと考えています。
