新型コロナ後の不動産投資 正解は守る投資?攻める投資?

新型コロナ後の不動産投資 正解は守る投資?攻める投資?不動産投資

新型コロナウイルス感染拡大は、個人投資家の心理に大きな影響を及ぼしています。ここではいくつかの投資家アンケートや金融機関のレポートを参考にしながら、2020年夏以降の投資活動(特にマンション投資)で「積極派と消極派のどちらを選択するべきか」を考えていきます。

コロナショック直後の投資スタンス「積極派VS消極派」はほぼ同じ割合

はじめに、新型コロナウイルス感染拡大が個人投資家に及ぼした影響をデータで見てみましょう。2020年5月、JSKパートナーズ株式会社が1,000人以上の投資家に実施したアンケートによると、「新型コロナウイルスは投資活動に影響を及ぼしていますか?」の問いに、約8割の人が「はい」と回答しました。新型コロナのすさまじい影響が伝わってきます。

では、新型コロナが個人投資家に与えた影響とは、具体的にどのような内容でしょうか。同アンケートによると「新型コロナウイルス流行後、どのような投資行動を取りましたか?」の問いへの回答からは、積極派と消極派が拮抗(きっこう)している様子がうかがえます。例えば、新型コロナをチャンスに変えようと考える「資産の買い増しを行った」という人は24.3%でした。

一方、新型コロナを機に守りに入った「リスクのある資産を売却」は12.9%、「投資をやめた」が9.4%で合計22.3%となっています。積極派と消極派の差はわずか約2%しかありません。同アンケートでもう一つ着目したいのは、「投資商品によって新型コロナの影響にかなりの差があった」ということです。最も影響が大きかったのは「株式」で76.0%、次いで「投資信託」が28.5%となっています。

これらの金融商品に比べて実物資産の「不動産」は13.3%、「金」が3.7%と影響が限定的でした。「有事に強い実物資産」という定説が新型コロナで証明された格好です。

新型コロナの影響が不動産価格に反映されるのは半年後?

2020年夏以降、国内の不動産相場は新型コロナの影響でどのように推移していくのでしょうか。不動産は有事に強い性格を持つ一方、経済危機が起きてから相場に影響が出るのにタイムラグがあるともいわれます。タイムラグを示すデータとして、2020年6月1日付けの日経新聞ではマンションの不動産(マンション)価格指数と日経平均株価の推移を比較したうえで、「株価の影響がマンション価格に表れるのは半年後」と分析しています。

タイムラグを前提に不動産や金融の専門家たちは今後の不動産価格をどのように予想しているのでしょうか。2020年4月に不動産サービス大手のJLLが不動産会社や国内外のファンド、金融機関など235社を対象に行ったアンケート調査によると2020年末にかけて不動産価格が「5~15%下落」と回答した割合は65.5%、「15%以上の下落」が23.8%でした。

これだけを見ると、不動産や金融機関の専門家たちの見方は悲観的です。しかし「今後、積極的に新規投資する」という回答は74.9%と大勢を占めています。つまり「相場は下がる可能性もあるが積極的に新規投資する」というスタンスが主流というわけです。このような一見矛盾するような結果に対して日経新聞では、「相対的に高い利回りが見込める不動産への投資意欲は底堅い」との見解を示しています。

このアンケート結果から「不動産相場が下がる可能性があるからといって単純に新規投資をしない理由にはならない」ということが分かります。なお、種類別の関心度では、「テレワークの増加でオフィスビルの需要が減る」という見方がある中で、相対的にマンションなど賃貸住宅への関心が高まっている傾向です。

マンション投資では高値づかみの「警戒しすぎリスク」に注意

今後の不動産投資で積極派・消極派、どちらを選択すべきかを判断するときに参考になるレポートがあります。みずほ信託銀行が発表した「不動産マーケットレポート2020年6月版」では、2008年9月に起きたリーマン・ショック時に高値相場で取得した賃貸マンションの収支が、その後どうなったかを分析しています。2020年現在の国内マンション価格は「高値止まり」といわれることもあるため、参考になるデータといえるでしょう。

不動産投資の最終的な収益は、「キャピタルゲイン(取得価額と時価の差額)」と「インカムゲイン(賃料収入の累積)」の2つの要素から算出されます。リーマン・ショック前後に賃貸マンションを購入したケースでは、高値だったためキャピタルゲインがマイナスになったのです。しかし賃料が毎月ストックされていくため、このマイナスが物件取得から4~8年で解消され、その後はプラスに転じたとの結果でした。

つまり不動産投資においては、「キャピタルゲインを気にしすぎるのは賢明ではない」ということです。あくまでも「長期的に安定した賃料を得られるか」にフォーカスして投資タイミングや物件選びをすることが重要といえるでしょう。

マンション投資の判断軸は「安定したインカムゲイン」にある

もちろん、今後の不動産相場がどのように推移するかを正確に予想することは困難です。2020年4~5月の株価の動向でも分かるように、「停滞する」と予測する専門家が多くても相場が急騰することもあります。コロナショック後の株価急騰を今後のマンション価格に織り込むと、その可能性も否定できません。このような先行き不透明な状況で大事なことは、賃貸マンションの物件相場が上がっても下がっても投資判断の基本的な軸は「安定したインカムゲイン(賃料)」に置くということです。

その意味で2020年後半以降の不動産投資においては、物件相場の動向を気にしすぎるのではなく、安定的に賃料を得られそうな物件と出会えたら、攻めることも戦略の一つでしょう。

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アセットONLINE編集部
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