逆イールドとは?ビジネスパーソンなら知っておきたい金利の話

逆イールドとは ビジネスパーソンなら知っておきたい金利の話マーケット

金利は経済のバロメータだといわれます。では金利の上下はどのような意味を持っているのでしょうか。

2019年8月にアメリカの金利が逆イールドを付けたことが話題になりました。なぜなら逆イールド状態が現れた場合、過去の事例を見ると、いずれも景気後退のサインだといわれているからです。この約1カ月後の2019年9月18日、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を0.25%引き下げました。アメリカが利下げに舵を取ったことにより、今後は各国の中央銀行も金利を下げる方向に動くことが予測されます。

なぜ中央銀行は金利を動かすのでしょうか。それは金利を動かすことで景気の落ち込みを何とか阻止しようとの思惑があるからです。今回は金利の基礎知識を逆イールドの現状と合わせて見ていきましょう。

金利の影響を受けない金融商品は皆無

金利は、世の中の金融商品で影響を受けないものは皆無といってよいくらいの影響力を持っています。例えば外国為替証拠金取引(FX)の場合、中長期で見ると2国間通貨の金利差によって金利が決定。株価は金利が下がれば上昇し、逆に金利が上がれば下がるのが一般的です。

身近なところでは住宅ローンや生命保険の予定利率、企業経営者であれば企業の借入金利など、すべて金利の影響を受けます。長期的な金融緩和政策や日銀のマイナス金利の影響は、特に地域金融機関の経営に大きな副作用をもたらしている一面もあるのです。デリバティブといわれる金融派生商品であっても、スワップ取引、先物取引、オプション取引(最近は金利以外のファクターで動いています)、すべて金利の影響を受けます。

このように金利の影響はさまざまな分野に波及しているため、金融機関で金融商品を扱うプロたちは、金利の動きに非常に敏感です。

逆イールドとは長期国債利回りが短期国債利回りを下回ること

アメリカ国債市場で見られた逆イールドとはどんな現象だったのでしょうか。2019年8月14日には、米国10年債利回りが一時2年国債の利回りを下回りました。それと同時に米国大型株の指数ダウ工業株30種平均は前日比で800ドルを超える下げとなり、同時に円高が進行しました。このときの模式図を見てみましょう。

縦軸が金利、横軸が国債の種類を表します。国債金利は一般的に、満期までの期間が短い国債のほうが低く、期間が長い国債のほうが高くなります。なぜなら期間が長い国債を保有するほうが、現金に比べてリスクにさらされている期間が長くなるからです。各国の中央銀行となるFRBや日銀、ECB(ヨーロッパ中央銀行)などは、景気動向に合わせて主に短期金利を誘導します。一方10年国債などは、取引を行う金融機関の市場参加者の思惑によって決定するのが常です。

国債でも社債でもすべての債券の仕組みとして「債券が買われれば、利回りが低下し、金利は下がる」ということになります。したがって今回の逆イールドが発生した理由は、市場参加者が将来の経済状態に不安を持ち国債を購入したため、金利が低下しFRBの誘導金利よりも低くなったのが原因です。

そのため逆イールドが景気後退の兆候といわれるのは、景気に敏感な市場参加者たちが国債を購入したからといえるでしょう。

このグラフは、過去における米国2年国債と10年国債の金利差を表したものです。米10年国債利回りが0%を下回りマイナス金利となったのちにリセッション(景気後退局面)が現れていることがわかります。いうまでもなく2008年の景気後退時期はリーマンショックの時期です。ただし逆イールドが発生したからといって、すぐに景気後退が始まるわけではありません。

グラフから見てわかる通り、マイナス金利からリセッションまで2年程度のタイムラグが発生しています。このように長短金利の差を観察していると景気の大まかな動きがわかるのです。それはひいては、投資している金融商品がどのように動くのかを予測するツールとして使えるともいえます。

逆イールドは過去の実績において景気後退のシグナル

各国の中央銀行が金利を動かすと日経新聞は1面で報道します。なぜならすでに見てきたとおり、金利が経済に大きく影響を与えるからです。特に逆イールドは長期国債利回りが短期国債利回りよりも低くなる現象で過去の実績では景気後退を示唆している一面があります。ビジネスパーソンも日ごろから金利の動向を意識することで経済の動きを迅速に把握することできるようになるでしょう。

著者・監修者プロフィール

アセットONLINE編集部
アセットONLINE編集部
アセットリードが運営する「アセットONLINE」では、将来を見据えた資産形成を考えるビジネスパーソンのために、不動産投資、資産運用、税金、マーケットに関する情報をわかりやすく配信しています。