ビル・ゲイツも注目!「無形資産」を知ると株投資がしやすくなる

ビル・ゲイツも注目!「無形資産」を知ると株投資がしやすくなる資産運用

ビル・ゲイツ氏は、感染症のパンデミック(世界的大流行)を2015年の段階で警告していたことで、その“先見の明”が再評価されています。そんな彼が「世界経済最大のトレンド」と表現したのが「無形資産」です。本記事では、無形資産とは具体的に何かを整理したうえで無形資産を意識した株式投資を考えます。

無形投資には具体的にどんなものがある?

世界中のあらゆる分野で、無形資産に積極的な企業は成長する流れが強まっています。企業の稼ぐ力の源泉が工場や設備といった「有形資産」からデータやブランディングなどの「無形資産」にシフトしているのです。この流れの中で株式投資を行う投資家は「無形資産に積極的な企業」に着目すると、資産運用を有利に進めやすくなるのではないでしょうか。主な無形資産には以下のようなものがあります。

・有形資産とは?無形資産とは?

有形資産無形資産
・建物
・情報通信設備
・コンピュータ以外の機器
・車両
・ソフトウェア
・データーベース
・研究開発
・デザイン、設計
・研修、訓練
・市場リサーチ
・ブランディング など

参照:『無形資産が経済を支配する−資本のない資本主義の正体−』 (東洋経済新報社)

ソニー株式会社の株価は有形資産を無形資産が上回った後に上昇した

無形資産への投資に積極的な企業は、本当に業績が伸びているのでしょうか。数多くのケース・スタディがありますが、分かりやすい例は2000年以降のソニー株式会社です。もともと同社は、日本のモノづくり企業の代表的な存在でしたが2000年代に入りゲームや音楽など無形資産への投資を進めました。同社の資産構成のうち2010年には無形資産が有形資産を逆転します。

最近は営業利益の約7割を無形資産がたたき出している状況です。もはやソニー株式会社はモノづくり企業ではなくコンテンツ企業といえます。 また無形資産を重視する同社の企業姿勢は、2015年ごろから株価に結果として表れるようになりました。2014年後半に2,000円前後だった株価は、2020年8月時点で8,000円超と約4倍にまで上昇しています。

ちなみにソニー株式会社の直近の業績は、新型コロナウイルスによる自粛の影響の大きかった2020年4~6期で見ても売上高は前年比+2.2%、純利益は前年比+38.5%と好調です。「無形資産に力を入れる企業はコロナ禍でも強い」ということを証明しています。

無形資産の投資がこれから本格化する日本はチャンス

このように無形資産に積極的なソニー株式会社でさえも米国企業と比べると、残念ながらその規模は劣っているのです。詳しく見ていきましょう。

日本経済新聞では、QUICK・ファクトセットのデータをもとに同じコンテンツ企業の米ウォルト・ディズニーとソニー株式会社の無形資産の規模を比較。2018年の段階でウォルト・ディズニーはソニー株式会社の2.5倍の無形資産を所有しており、両者の間には大きな開きがあります。 

さらに広い視点で見ても、米国はGoogle、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftからなる「GAFAM(ガーファム)」という無形資産を主体にする企業群を生み出せたのに対し、日本ではこれに匹敵する企業を1社も生み出せませんでした。一般的に日本は無形資産の後進国であり、逆にいうと無形資産への積極投資で成長する企業が今後生まれやすい環境といえます。新たにやってくる無形資産への波をキャッチできれば、株式投資で結果を出しやすいのではないでしょうか。

無形資産を重視するオールドエコノミー企業に注目!

「無形資産を重視する会社の株式を狙う」という視点で分かりやすいのは、ソフトウェア開発やゲーム開発、オンライン教育、テレワーク支援などの「ニューエコノミー分野を狙う」というものです。ただしニューエコノミー分野の企業は注目する投資家も多い分、PER(株価収益率)が高くなりがちで反動による急落リスクもあります。

もう一つの視点は、小売りや製造、建設、交通など「オールドエコノミー分野で無形資産への投資に積極的な企業を狙う」というものです。オールドエコノミー企業はPERが低いことも多く「無形資産×既存事業」のシナジー効果で成長する可能性を秘めています。とはいえ成果を出すには期間がかかることが予想されるため、中長期の株式保有が基本になるでしょう。

オールドエコノミー企業の無形資産の投資例としてセブン&アイ・ホールディングスは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による販売変革を進行中です。IT投資に積極的で2020年度は約1,212億円を投じると発表しています。これは国内の大企業の中でもトップクラスの投資規模です。このほか無形資産への投資例としては、無人コンビニの出店を加速させる「JR東日本」、遠隔で工事の進捗確認や施工管理を行う仕組みづくりを進める「大成建設」などもあります。

無形資産に投資する主なオールドエコノミー企業
・セブン&アイ・ホールディングス
・JR東日本
・大成建設

もちろん無形資産の投資に積極的なすべての企業が結果を出せるわけではありません。しかし少なくとも投資家は、このような時代の流れにアンテナを張って投資の判断材料にしていく必要がありそうです。

伸びている企業は有形資産への投資もしっかりと行っている

ここでは、企業の成長性と無形資産をテーマに見てきました。勘違いしてはいけないのは、無形資産で稼ぐ力が強まっている流れとはいえども「建物や設備といった有形資産も無視できない」ということです。例えば2000~2018年にかけての有形資産の伸び率を見てみると、IT企業の代表である楽天株式会社は57.6倍、アマゾンは168.7倍に増えています。

成長性の高い企業は無形資産を重視しつつも、有形資産への投資を拡大しているケースが多い傾向にあります。同様に個人投資家も無形資産を重視する企業に目を奪われるだけでなく、不動産や金などの有形資産にも目を向けてバランスよく投資をしていきたいものです。

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アセットONLINE編集部
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