2019.7.4
税金

賃貸経営の事業承継

(写真=Denphumi/Shutterstock.com)
(写真=Denphumi/Shutterstock.com)
日本の高齢化と共に、賃貸物件のオーナーの高齢化も進んでいます。まだまだ、現役で頑張るといった意気込みは大切ですが、子供たちへの引き継ぎも進めておかないと、自分が万が一のときに準備不足で事業が停滞することになってしまいます。その先には賃借人というお客様がいらっしゃるので、時間的猶予もありません。スムーズに賃貸経営を進めるための段取りが大切です。以下にそのコツをお伝えしていきます。

突然の引き継ぎは、混乱の原因に

賃貸物件のオーナーである親世代が突然、亡くなるケースもあります。何の準備もないまま引き継ぎせざるを得ないときに困るのは子供たちです。そこには、賃借人がいるからです。

まず、すぐに起こることは、お金の問題です。賃借人からの振込(自主管理か管理会社経由か)、管理会社への支払い、修繕積立金の積立口座など、子供世代が知っておくべきことはたくさんあります。親世代が亡くなると、基本的には口座が凍結され、原則として死亡保険金以外はすぐに引き出すことができません。たとえ親族であっても遺産分割協議書にサインが終わらない限りは動かすことができないのです。

このような不便な状態をなくす方法の一つとして最近注目されているのが、「家族信託」です。事前に親世代が子供の誰かを受託者に指名し、受託者は委託者(親世代)から託された財産を親の意思をふまえながら運用していくことができます。さらに2019年7月の民法改正により、「預貯金債権の仮払い制度」が施行され、相続人の生活費、葬儀費用、相続債務の弁済のための預貯金の引き出しが、150万円以下であれば可能となります。

高齢化によって認知症になるケースも増加しており、認知症と判断された後はすべての契約行為がストップし、事業の継続性が途切れることとなります。その対策として、「遺言代用信託」を活用する方法もあります。親世代が認知症などになった際には、信託の管理権限を後継者(受託者)などに移転するとしておくことで、親の意思を確実に実現することができます。

また、「私が亡くなった場合は、葬儀費用として妻の口座に200万円振り込む」と指定しておくと、信託銀行等は、指定口座へ指定された金額を速やかに振り込むことができるのです。

金・人・情報の引き継ぎが必要

賃貸事業の事業承継は、単に物件の引き渡しに留まらず、それにまつわる事業承継そのものです。一般の会社における事業承継では「人・物・金」と言われますが、賃貸経営の事業承継は「金・人・情報」が大切です。

まず、「金」は親世代に財産目録を作成してもらうことから始まります。そこには。銀行・証券口座の明細、通帳類の保管場所、生命保険の加入状況(会社名、契約者、受取人、契約日、満期日、掛金、受取保険料など)、借入金(借入先、金利、借入金額、返済期間等)、自宅不動産(登記簿、自宅権利書、購入当時の各種書類など)、賃貸不動産(自宅と同じ)、車、貴金属、美術骨董品などの一覧を作成してもらいます。これを作成してもらうことがなかなか大変で、センシティブな内容も含まれるかもしれませんので、切り出し方を工夫する必要があるでしょう。

次に「人」です。特に賃貸経営においては、PM(プロパティマネジメント:賃貸経営管理業務)・BM(ビルマネジメント:ビル管理運営)など管理会社・担当者名、修繕会社、税理士が関与していれば税理士などです。その他、不動産に関するFP(ファイナンシャル・プランナー)などのブレーンがいれば、その人を紹介しておきます。

最後の「情報」は、賃貸借関連の契約書、伝票、帳簿類、過去の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー表などがあれば引き継ぎます。さらに物件図面なども必ず必要となります。将来の大規模修繕には必ず必要となります。さらには、子供世代に売却ということもあり得ます。そのときに備えて、これらの書類を準備しておくことが大前提です。

引き継ぎの手順

これら3つの要素を踏まえた上で、これらをどのように継承していくかの手順が大事です。家族構成や資産状況によって少し異なりますが、一つの目安にしてください。

① 資産目録の作成
② ブレーンの紹介、引き継ぎ(FP、税理士、不動産コンサルタントなど)
③ 子供たちへの事業内容の引き継ぎ、賃貸経営のポイントなどをコミュニケーションしておく
④ 賃貸経営の一部をやってもらいながら、全体像を把握してもらう
⑤ 事業の後継者を決め、PM・BM会社の担当者に紹介しておく
⑥ 生前、できれば認知症にならないうちに賃貸経営から引退し、事業承継を終わらせておく

賃貸経営の事業承継にはある程度の時間が必要です。いざというときに慌てないよう、何事も事前準備をしておくことが大切です。物件の先には賃借人というお客様がいることを常に忘れず、スムーズな引き継ぎを行っていくことで、空室リスクを最小限にしていくことができるのではないでしょうか。

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