2020.7.31
資産運用

外貨建て保険の特徴は?どんな人に向いている?

(画像=ipopba/stock.adobe.com)
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保険や金融商品は種類が多岐にわたり構造も複雑なものが多いため、商品内容をよく理解せずに購入してしまうケースがあります。外貨建て保険はその一つで、販売員の説明不足によるとされる苦情も少なくないようです。外貨建て保険では一体どんな点に注意する必要があるのでしょうか。本記事では外貨建て保険の特徴や向いている人について解説します。

複雑さゆえに苦情が多い外貨建て保険

外貨建て保険の種類には一生涯保障が続く「終身保険」、満期金を受け取れる「養老保険」、将来年金として受け取る「個人年金保険」などがあります。

外貨建て保険は一般的に米ドルやユーロなど外貨で運用される生命保険のことを指します。高金利が魅力な商品ですが、為替レートの動きによっては日本円で受け取る段階で損をすることもあるため注意が必要です。しかも円との交換の仕組みや手数料、解約返戻金などの商品仕様が分かりにくいため、誤解したまま契約してしまう人も少なくありません。

独立行政法人国民生活センターによると、消費生活センターに寄せられる外貨建て生命保険の相談件数は 2014年の144件に対して2018年が538件と約3.7倍になっています。相談内容としては、以下のようなものがあります。
  • 元本割れのリスクを理解していなかった
  • そもそも保険という認識がなかった
  • クーリングオフしたが円高で損失を被った
トラブルの原因を加入時の説明不足とする苦情もありますが、あえて誤解させるような説明をしたり元本保証と偽って加入させたりするという不正の報告もあります。2019年には、ゆうちょ銀行が認知力の低下した高齢者へ積極的に虚偽の説明を含めた営業を行っていることが明るみになり社会に衝撃を与えました。

解約返戻金が大幅な元本割れを起こす例

外貨建て保険のリスクや手数料は広範囲にわたります。販売員が真摯に説明したとしても完璧に理解できる人は少ないでしょう。そもそも加入を勧める側が内容をよく把握していないことも少なくありません。ただ為替レートのリスクは比較的理解しやすいのではないでしょうか。加入時よりも円安になれば受取額は増え、円高になると減るのが特徴です。

例えば、米ドル建てで1米ドル100円のときに保険金額1万ドルで加入した場合、保険金受取時に為替レートが変わっていなければ100万円支払われます。もし1米ドルが110円の円安になった場合は110万円です。円高が進み1米ドル90円になると90万円しか受け取れません。(為替手数料は考慮せず)これは、どの外貨建て商品でも同じです。

また保険料支払時や保険金受取時には、為替手数料がかかります。大手生命保険グループのある商品の場合、片道50銭です。例えば1米ドル100円なら100万円で1万米ドル購入することになり、円貨を米ドルへ交換するだけで「1万米ドル×50銭=5,000円」が手数料としてかかります。つまり為替手数料は契約時に「円貨→米ドル」、解約時に「米ドル→円貨」と往復でかかることになるのです。

上記のケースだと、為替レートが全く変わらなかったとしても為替手数料だけで1万円かかることになります。為替手数料の考え方は外貨預金や外貨定期預金などを行うときでも一緒です。為替手数料は金融機関によって大きく異なります。また外貨建て保険は中途解約した場合、大幅に損をする可能性がある点も押さえておきましょう。

なぜなら解約したときに受け取る解約返戻金は、加入期間が短いほど少なくなるからです。この点は円建ての低解約返戻金型終身保険と同様です。例えば、他のある商品では、加入から5年経過時点で解約すると保険料の7割程度しか戻ってきません。外貨建て保険には「積立利率変動型」と「市場価格調整(MVA)」という特徴的な仕組みがあります。

これらを取り入れている日本円建ての保険はほとんどありません。

積立利率変動型

市場金利の変化によって積立利率が変わる仕組みです。高金利で運用することによって外貨建てベースでの受取額が増えることがあります。解約返戻金は支払った保険料から数パーセントの保険費用を差し引き積立利率で運用した金額を基本とするのが一般的です。

市場価格調整(MVA)

中途解約した場合に市場金利に応じて解約返戻金が増減する仕組みです。金利が上がれば受取額は少なくなり、金利が下がれば増えます。このような金額の動きは、主な運用先である債券の性質に由来しています。

為替のリスクがプラスに働くことも

為替レートの変動は損失を被るリスクがある一方で円安時には恩恵を受けられます。為替リスクと金利の高さは相殺される(ハイリスクの場合ハイリターンになる)ということが一般的です。投資家の中には、資産を日本円だけで持つことをリスクと考える人もいます。なぜならインフレによって円の価値が下がった場合、円預金や国内債券は目減りしてしまうからです。

このような考え方ができる人にとっては、外貨建て保険の形で通貨を分散して持つことには意義があるといえるでしょう。

保険ならではのメリットも

外貨建て保険の中には、円建ての目標金額を設定し達成したら自動的に円建ての終身保険に移行するタイプもあります。年金保険に活用すると金利やレートの動き次第では、早い段階で老後資金を確保できるかもしれません。また保険には税制メリットもあります。保険料を支払った年には年末調整や確定申告にて所得税と住民税の生命保険料控除を利用することができます。また相続税の面でも死亡保険金にある法定相続人一人あたり500万円の非課税枠を活用できます。

外貨建て保険のセールストークの一つとして「資産運用の代わりになる」というものがあります。しかし前述の手数料や解約返戻金の仕組みを踏まえると純粋に資産運用として行うのであれば外貨預金やFXを活用したほうが合理的といえます。

保険の本来の目的は保障を得ることにあります。死亡リスクや長生きリスクを回避したり縮小したりするものです。「万が一に備えて保険に加入したいし外貨に投資もしてみたい……でもいろいろと管理するのは面倒だから一本化したい」という人に外貨建て保険は向いているかもしれません。

インフレリスクも気になる人に

外貨建て保険は受取時の為替レートによって受取額が大きく変動します。為替手数料の存在も無視できません。タイミングを計って中途解約しても契約期間が短いと解約返戻金が少なくなってしまいます。積立利率が変動するタイプも同様に手数料の控除や市場価格調整という仕組みにより外貨建てベースでも元本割れを起こす可能性があるのです。

そのため資産運用の一環として加入するとデメリットが多いといえるでしょう。しかし生命保険として保障を得つつ国内のインフレリスクにも備えられる商品として考えるのであれば一つの選択肢になります。どちらにしても外貨建て保険の加入を検討する際は、ある程度の金融リテラシーを高めておくことは必須です。販売員のセールストークだけに流されず自分自身でさまざまなリスクを理解するよう心掛けましょう。

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