2020.5.28
資産運用

広がる金融老年学という考え方 認知症になった場合の金融資産の管理について

(画像=tomertu/Shutterstock.com)
(画像=tomertu/Shutterstock.com)
高齢化社会になって金融業界で最近話題になっているのが、認知症と財産の関係です。日本でも金融老年学(ファイナンシャル・ジェロントロジー)という言葉がようやく出現し、高齢者と財産との関係が学問的にも取り扱われ始めました。そこで今回は認知症になったときの金融資産の管理の方法を解説します。

高齢者数と認知症の問題

日本人の65歳以上の高齢者数は3,558万人であり、日本の総人口に占める割合は28.1%と年々増加しています。中でも75歳以上の後期高齢者数は、1,798万人(14.2%)となっています(内閣府「令和元年版高齢社会白書」より)。

そのような人口構成の中で、金融資産の保有状況はどうなっているのでしょうか。

世帯主の年齢階級別の家計の貯蓄・負債状況を見ると、世帯主の年齢が高くなるにつれて 1世帯当たりの純貯蓄はおおむね増加し、世帯主が60~69歳の世帯と70歳以上の世帯では、 他の年齢階級に比べて大きな純貯蓄を有しています。

持家率も年齢が高くなるほど上昇する傾向があります。また、貯蓄現在高について世帯主の年齢が60歳以上の世帯と全世帯(いずれも二人以上の世帯)の中央値を比較してみると、60歳以上の世帯は1,639万 円と、全世帯1,074万円と比べて約1.5倍となっています。

貯蓄現在高の分布を見ると、世帯主が60歳以上の二人以上の世帯では、4,000万円以上の貯蓄を有する世帯が 17.6%であり、全世帯の11.8%と比べて高い水準となっています。これらのデータから読み取れるのは、高齢者の金融資産保有率は非常に高いということです。
 
 
(出典:内閣府高齢社会白書)
こうなると問題は、この年齢層が認知症になったとき、金融資産をどう管理していくかということです。

認知症は当然ですが、高齢になればなるほど発症率が高まります。2012年時点での認知症患者数は462万人と認定され、65歳以上の高齢者の約7人に1人であるものの、これが2025年には約5人に1人になるという推計もあります(内閣府「平成29年版高齢社会白書」より)。

このような状況下で資産保有者である高齢者が認知症なった場合、相続などさまざまな問題が発生します。たとえば「相続に備えた対策が困難になる」「財産管理運用が困難になる」「不動産処分が難しくなる」といったことが起こるのです。

民事信託(家族信託)とは

このような認知症のリスクに備える方法として、今もっとも有効な手段といわれているのが「民事信託」です。親(委託者)が子(受託者)に財産、運用、処分を任せる信託契約を家族間で締結することで、子が親の代わりに契約行為ができる仕組みです。

この仕組みより、親が所有している賃貸不動産の管理や建物の修繕のために金融機関から借入をする、所有する土地を有効活用するなど、さまざまな契約行為を親に代わって行うことができるようになるのです。

しかし、民事信託を活用する際は、親が子にすべてを任せると決断するのはなかなか難しいのが現状です。たとえば、親としての子に対する威厳、自分はまだまだ正確な判断ができるといった過信、また子に財産を託すと使ってしまうのでは、といった現実的な理由で躊躇する親もいるのです。

民事信託は設計が大事

民事信託はいろいろな場面で有効ですが、家族関係や財産の資力、当事者間の関係など、家庭それぞれによって状況は変わります。その際、大切なのは部分最適を考えるのではなく、全体最適を考え民事信託を設計することです。

民事信託の設計は自宅の設計にたとえられ、設計士にどのような家を建てたいのかをしっかりと伝えた上で設計に入るように、まずはどのような関係を望むのかを明確にした上で、財産の分析などを詳細に行い、委託者・受託者双方の気持ちが理解できるパートナーを選択することが大切です。

依頼先としては、ファイナンシャルプランナー、税理士、行政書士、司法書士、弁護士といった、お金と法律がうまく融合したチームに依頼するとスムーズな設計ができる可能性が高まります。

民事信託は早めに準備をする

自分はまだまだ元気だ、認知症にはならない、と考える方々も多いのが事実です。人間が「自分はそうならない」というバイアスを持つのはごく自然なことだからです。

そのような場合、自分に判断能力があるうちは自分で管理し、民事信託の開始日を「本人の意思表示時期」「指定した時期が到来したとき」「意思能力を喪失したとき」といったタイミングで開始するといいでしょう。いずれにしても、財産喪失の防止には早めの準備が大切です。

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