2019.8.29
資産運用

円預金はハイリスク・ローリターン?

(画像=Chayantorn Tongmorn/Shutterstock.com)
(画像=Chayantorn Tongmorn/Shutterstock.com)
日本は島国であり江戸時代までは鎖国を行ってきました。そのためかはどうかは分かりませんが、どちらかというと保守的な感性を持っている人も少なくありません。これは投資に対しても同様のことがいえます。日銀の資料によると2018年3月時点の家計金融資産の内訳は現預金の比率が5割以上になります。一方アメリカの現預金比率は1割強、欧州が3割強と少なく、日本の資産に対する保守的な国民性がみてとれます。

しかしこれだけグローバル化が叫ばれている時代ですので、資産運用も同時に国際化の視点が大切です。今回は、資産運用を円預金だけに置いておくことの危うい理由を事例を持ち出しながら解説します。

日本の社会構造は世界の中で変化し続けている

現代はインターネットの普及により個人の力が大きくなり、その下に企業、国が支えるという社会構造になってきました。この事が意味するところは、個の責任も大きくなり自分で考えて行動する必要があるということです。しかし時代の変化についていけず、まだ昭和時代の企業至上主義の企業型社会主義ともいえる社会構造にノスタルジーを感じ、その価値観から動こうとしない人たちも少なくありません。

まず経済の基本である世界の名目GDP(USDベース)ランキングを見てみましょう。

世界の名目GDP(USDベース)ランキング(2017年)
順位 名称 単位: 10億USドル 前年比 地域
合計 80,139.24
1位 アメリカ 19,485.40 +778.25 北米
2位 中国 12,062.28 +840.45 アジア
3位 日本 4,859.95 -66.72 アジア
4位 ドイツ 3,700.61 +204.01 ヨーロッパ
5位 インド 2,652.25 +362.49 アジア
6位 イギリス 2,639.97 -29.13 ヨーロッパ
7位 フランス 2,587.68 +121.53 ヨーロッパ
8位 ブラジル 2,053.21 +257.61 南米
9位 イタリア 1,946.89 +76.92 ヨーロッパ
10位 カナダ 1,650.19 +119.91 北米
<出典>
IMF - World Economic Outlook Databases (2019年4月版)

この表から、日本は、アメリカ、中国に続いて世界第3位の経済大国だということがわかります。しかしGDP Totalは、一人当たりGDP×人口で計算されますので、すでに始まっている人口減がますます顕著になってくると、将来この順位は下がる可能性が高いです。

一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング(2017年)
順位 名称 単位: USドル 前年比 地域
1位 ルクセンブルク 105,712.98 +3,352 ヨーロッパ
2位 スイス 80,642.58 +152 ヨーロッパ
3位 マカオ 77,414.52 +7,136 アジア
4位 ノルウェー 75,513.64 +4,810 ヨーロッパ
5位 アイスランド 72,389.87 +10,385 ヨーロッパ
6位 アイルランド 68,722.58 +5,433 ヨーロッパ
7位 カタール 62,826.06 +4,861 中東
8位 シンガポール 59,990.06 +3,535 アジア
9位 アメリカ 59,895.00 +2,018 北米
10位 デンマーク 57,380.20 +2,715 ヨーロッパ
11位 オーストラリア 55,952.72 +3,975 オセアニア
12位 スウェーデン 52,924.37 +1,679 ヨーロッパ
13位 オランダ 48,555.35 +2,528 ヨーロッパ
14位 オーストリア 47,383.87 +2,278 ヨーロッパ
15位 香港 46,091.22 +2,595 アジア
16位 フィンランド 45,937.75 +2,355 ヨーロッパ
17位 サンマリノ 45,882.36 +1,573 ヨーロッパ
18位 カナダ 45,223.97 +2,777 北米
19位 ドイツ 44,770.58 +2,310 ヨーロッパ
20位 ベルギー 43,672.41 +2,126 ヨーロッパ
21位 ニュージーランド 41,350.26 +2,367 オセアニア
22位 イスラエル 40,560.26 +3,177 中東
23位 フランス 40,045.58 +1,792 ヨーロッパ
24位 イギリス 39,975.38 -682 ヨーロッパ
25位 日本 38,344.02 -461 アジア
26位 アラブ首長国連邦 37,732.66 +1,506 アジア
27位 バハマ 32,660.57 +513 中南米
28位 イタリア 32,132.47 +1,308 ヨーロッパ
29位 プエルトリコ 31,581.39 +1,106 中南米
30位 韓国 29,749.80 +2,142 アジア
<出典>
IMF - World Economic Outlook Databases (2019年4月版)

この表は少しショッキングな表で、一人当たりの名目GDPを表したものです。1993年は世界第3位でしたが、年々順位が下がり、2017年時点のデータでは25位となっています。トレンドとしては、今後も下がり続けることが予想されます。したがって一人当たりGDPも下がり、人口も減少していくので名目GDPも将来どんどん下がっていく可能性が高いでしょう。

極めて大雑把に日本経済の状況を俯瞰しましたが、こと個人の金融資産に目を移していくと以下のことが見えてきます。

日米の個人金融資産の預け先別割合

この円グラフから、日本の1,829兆円の半分である約960兆円が普通預金0.001% 定期預金0.01%(メガバンク+ゆうちょ銀行の金利)の預金または現金です。2019年10月に予定されている消費税は、このままですと予定通り10%に増税されるでしょう。しかし将来にわたり、このままでとどまることはない可能性が高いでしょう。

財政健全化という錦の御旗の下、世界各国の消費税を参考にすると将来は20%近くまで税率を上げざるを得ないのではないでしょうか。消費税増税が続けば、じわじわとインフレが続き円預金の価値は低下します。インフレに対応しきれないと、ますます現預金の資産は目減りすることになるのです。2018年度末の日本の公債残高は、約883兆円となり、GDPの約2.4倍となりました。

実はこの数字と同様な事象が過去に起きています。1945年8月から1949年のドッジ・ラインにいたるまでの激しいインフレのことです。過酷なインフレにより、国民がそのつけを払った格好となりました。1934~1936年の卸売物価ベースと比較して、卸売物価は1945年に約70倍、1949年までには約220倍というハイパーインフレに直面します。

そういった混乱を経て国の財政は落ち着きを取り戻しました。すなわちインフレ税とも呼べる負担を国民に押し付け、累積債務をほとんどないものとしたわけです。

円だけで資産形成することの危うさ

当時と現在の社会情勢は著しく異なりますから、一概に比較はできません。しかし円だけで資産を保有することの危うさは、当時の国民は一度経験しています。現代の政府の累積債務残高を支えているのは、個人金融資産1,829兆円なのです。もしこれを少しでも運用するなどして増やすことができれば、日本の将来も少しは安心できることになります。

さまざまな運用の選択肢がある時代では、自分の心構え次第でリスクヘッジとして外貨を持つことも可能です。資産の中で自宅も立派な資産ですが、日本の不動産ですから海外で所有しない限り、不動産は円建て資産になります。冒頭で解説した現預金の割合の多さも踏まえると、日本人の円建て資産率は極めて高いといえるでしょう。

行動経済学において、自国建て資産で持つことをホームカントリーバイアスと呼びます。「自国通貨で持つと為替リスクから逃れられ安心」という根拠のない「なんとなく」という感覚に陥る人も少なくありません。資産運用における鉄則の一つは「分散投資」です。この観点から見ても、通貨の分散保有も非常に大事な要素だということが理解できるのではないでしょうか。

円預金だけを保有することは、「ペイオフさえ意識すれば元本割れしないため安全」と思っている人も多いかもしれません。しかし額面が元本割れしなくても将来インフレに巻き込まれた場合は、「ローリターン・ハイリスク」という一面もある運用方法であることも理解しておく必要があります。

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