2020年度から必修化の「プログラミング教育」とはどんな教育か

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「プログラミング教育」が2020年度から小学校で必修化されます。プログラミングの学習は子どものみならず、社会人にとってもリカレント教育に関連する学びとして注目されています。将来、社会で活躍する人材に育てるために、プログラミング的思考をどのように育み、どのように成長させていくのでしょうか。本記事では文部科学省がプログラミング教育を必修化する狙いを探ります。

プログラミング教育とは何か

はじめにプログラミング教育の定義について考えてみましょう。プログラミングとは、簡単にいうとコンピュータのプログラムを作成することです。2020年2月に文部科学省が公表した「小学校プログラミング教育の手引き(第三版)」(以下、手引き)によると、プログラミング教育について以下のような見解を示しています。

「コンピュータは人が命令を与えることによって動作します。端的にいえば、この命令が『プログラム』であり、命令を与えることが『プログラミング』です」
出典:文部科学省

コンピュータは処理能力が高く優秀ではありますが、プログラムがないと動くことができません。実は私たちの生活の多くはコンピュータ以外においてもプログラムによって成り立っています。例えば、料理にもおいしく作るための手順があり、運動会やコンサートなども行う順番が決まっていて、プログラム通りに進めることでスムーズに進行させることができるのです。

小学生のうちからプログラミング的思考を学ぶことは、日常生活を営むうえでも極めて重要な要素といえるでしょう。

プログラミング教育で将来活躍する有能な人材を育てる

文部科学省は手引きの中でプログラミング教育を必修化する目的について以下のように記述しています。

「プログラミング教育は子供たちの可能性を広げることにもつながります。プログラミングの能力を開花させ、創造力を発揮して、起業する若者や特許を取得する子供も現れています。子供が秘めている可能性を発掘し、将来の社会で活躍できるきっかけとなることも期待できるのです。
このように、コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なこととなっています。」
出典:文部科学省

教育目標に沿ってプログラミング教育を受けることによって、将来社会で活躍できる有能な人材に育つことが期待されているのです。

学年別のプログラミング教育の目標と開始年度は下表の通りです。(有識者会議「議論の取りまとめ」抜粋より)

学年開始年度教育目標
小学校2020年度身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。
中学校2021年度社会におけるコンピュータの役割や影響を理解するとともに、簡単なプログラムを作成できるようにすること。
高等学校2022年度コンピュータの働きを科学的に理解するとともに、実際の問題解決にコンピュータを活用できるようにすること。

プログラミング教育で「論理的思考」を身につける

日本人はコミュニケーションが苦手といわれています。はっきりとものを言わない国民性のため、相手から誤解を受けることもあるでしょう。プログラミング教育によって論理的思考を習得することで、筋道を立てて分かりやすい表現で自分の考えを相手に伝えられるようになることが期待できます。

文部科学省が小学校プログラミング教育のねらいと位置付けについて、「情報活用能力を構成する資質・能力」として以下の3つを掲げています。

【知識及び技能】
情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法や、情報化の進展が社会の中で果たす役割や影響、情報に関する法・制度やマナー、個人が果たす役割や責任等について、情報の科学的な理解に裏打ちされた形で理解し、情報と情報技術を適切に活用するために必要な技術を身に付けていること。

【思考力、判断力、表現力等
様々な事象を情報とその結び付きの視点から捉え、複数の情報を結び付けて新たな意味を見出す力や、問題の発見・解決等に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身に付けていること。

【学びに向かう力、人間性等】
情報や情報技術を適切かつ効果的に活用して情報社会に主体的に参画し、その発展に寄与しようとする態度等を身に付けていること。

プログラミング教育でわかりやすく指示することを身につけることで、人と会話する際にも相手に論理的に説明できるようになり、コミュニケーション能力の向上に役立ちます。「プログラミング教育」の狙いは、小学生のうちからプログラミング的思考を学ぶことで、社会に出ても通用する論理的思考ができるようになり、グローバルに活躍できる人材を育成することといえます。

リカレント教育の一環としてスキルアップにもつながる

プログラミング教育は、小中高の子どもだけにとどまらず社会人が「リカレント教育」の一環として学ぶチャンスといえます。リカレント教育とは、社会人になっても学校等の教育機関で学び、再び社会に出ていく生涯教育システムを指します。2020年1月に総合転職エージェントの株式会社ワークポートが行った「リカレント教育について」によると、「改めて学び直しをしていることはあるか」との質問に対し40.7%の人が「ある」と答えています。また、学び直したい内容について聞いたところ、「英語・英会話」に次いで2番目に多い答えが「プログラミング」と「経営学・経済学」でした。

今回、「プログラミング教育」が始まることを機に、大人(親)も子どもと一緒にプログラミングを学ぶことで「論路的思考」が身につき、自分自身の仕事におけるスキルアップにつながるかもしれません。

人生100年時代においては、これまでよりも働く年数が長くなることが予想されます。一社会人として自主的に「リカレント教育」を行なう人と行なわない人とでは、スキルに大きな差が生まれて行くでしょう。数年後にはプログラミング教育で「論理的思考」を身につけた若い世代が社会に出てきます。社会人として淘汰されてしまわないためにも、「リカレント教育」に目を向けてみてはいかがでしょうか。

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生涯にわたり「学校教育」を分散させようとする理念が「リカレント教育」で、働く上で必要な知識・技術はフルタイムの就学とフルタイムの就職を繰り返して習得するというものです。しかし、日本では本来の意味でのリカレント教育が実施されることはまれであり、働きながら学ぶ、心の豊かさや生きがいのために学ぶ、学校以外の場で学ぶといったケースをリカレント教育と捉えています。

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アセットONLINE編集部
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